「アンネの木」が2週間前に強風で倒れた。第2次世界大戦中にユダヤ人少女アンネ・フランクが
家族と一緒に隠れ住んだ家の裏にあったマロニエのことだ
▼ナチスの迫害を逃れて住んだ家はアムステルダムに現在もある。屋根裏部屋の小さな窓から見える
裏庭の風景が、少女にとって外界のすべてだった。この木のことは「アンネの日記」にも出てくる
▼樹齢は当時既に100年前後と推定されていた。高さは約20メートル。数年前からは立ち枯れ状態に
なっていた。「歴史の証人」として惜しむ声が海外からも寄せられ、倒れないよう補強されてきたが、
力尽きたのか、根から1メートルの部分で折れた
▼強制収容所に送られるまでの約2年間、少女を励まし続けた1本の木は倒れても、心を継いだ木々が
ほかの場所で、今も、これからも、枝を伸ばし続ける。移植が進められてきたからだ。
「アンネの木」は世界各地にある
▼「アンネのバラ」についてはよく知られている。日記を読んで打たれた育種家が新品種として作り出し、
15歳で命を終えた少女の父親に贈ったのが始まり。株分けされて日本でも育てられてきた
▼岐阜県には「アンネのバラ園」もある。昨年はこの公園に「アンネの木」の“子孫”が届いた、と報じられた。
木は同県内にある“日本のシンドラー”杉原千畝の記念館などにも分けられたそうだ。少女が夢見た
自由と平和への願いは世界中で枝葉を付けている。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/195495