猫は霊力を持つ動物として恐れられたり、養蚕農家でネズミ捕りの家畜として重宝されたりしたが、ペットとしての歴史も古い。
国内では弥生時代の遺跡から骨の出土例があるほか、奈良時代に仏教の経典をネズミから守るため、中国から輸入されたと伝わる。
平安時代に書かれた枕草子の「上にさぶらふ御猫は」には、一条天皇が愛猫に「命婦(みょうぶ)のおとど」と名付けて位階を
与えていた記録がある。ある日、この猫が翁丸という犬に追いかけられ天皇の懐に逃げ込むと、怒った天皇は翁丸を折檻(せっかん)
して追放した。当時の飼い猫は綱につながれ、犬よりも大切に扱われることが多かったという。
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県内で最も古い飼い猫の物語は、石川町の「猫啼(ねこなき)温泉」に伝わる。同町に生まれた平安中期の歌人、和泉式部が京に
上る際、置いていった愛猫「そめ」が主人を慕って鳴き続けたという伝説が残っている。
同温泉の旅館「井筒屋」などによると、和泉式部は同町の長者、安田兵衛国康の娘、玉世姫(たまよひめ)として生まれ、京都に
上ったのは13歳の時。幼いころ、髪をとかすために通った泉が今の猫啼温泉だという。
式部と別れた猫は悲しみのあまり衰弱したが、泉につかるうちに回復し、それを見た村人が湯治場を設けたといわれる。
現在、当初の泉は消えてしまったが、式部が櫛(くし)を置くのに使っていたという「櫛上げの石」が残っている。この温泉は、弱い
放射能泉として神経痛や痔に効果があるとされ、現在多くの湯治客でにぎわっている。
井筒屋女将(おかみ)の溝井美佐子さんは「とても主人思いの猫だったんでしょう。犬鳴という地名は全国にあるが、猫は珍しいので、
猫好きな人が地名につられて来ることもあります」と話す。=つづく
毎日jp
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