◆阪神4x─3巨人(30日・甲子園) 勢いあまって、打席の中で跳びはねた。
小笠原のフルスイングにはじかれた打球は、強い浜風にも速度を緩めない。「風が逆だったので
どうかなと思ったけど、よく伸びてくれたよ」。阪神ファンで黄色に染まった右中間スタンドへ白球
が吸い込まれた。
初回2死だった。フォッサムの初球、真ん中に甘く入った138キロの直球を見逃さなかった。
「初球からしっかりと準備をして、とらえることができた」という自画自賛の9号ソロ。ラミレス、ヤクルト
のガイエルに並ぶリーグトップタイの一発で、先取点を奪った。
36歳にして、自らの限界を突き破った。4月の打点は27となり、昨年5月の26を更新し、自己
最多となった。甲子園では、日本ハム時代を含めて昨季まで通算40戦で本塁打なし。球場の
広さに加え、左打者にとって不利となる浜風に打ち勝てなかった。それでも「打てるものなら
打ちたい」とあきらめることなく、4月7日の阪神戦で、通算42戦目にして初アーチをマーク。
この日の“2号”を含め今季は4戦2発と、完全に征服した。
伏線は今季1号にあった。3月27日のヤクルト戦(東京D)で、推定145メートルのソロを
旭化成ホームズの看板に当てた。プロ14年目。東京D通算153本目にして看板弾は初体験。
「自分でも打てるんだということが分かった」と自身が一番、驚いた。自分は長距離打者ではない。
そう決めつけていたが、思い違いだった。日々積み重ねてきた鍛錬が、想像を上回る飛距離を
生んでいる。