>>31 「揮刀如~」
「日本の武士の刀術はまるで神の如しだ。
我々の明兵は武士を見れば皆身がすくみ逃げ腰になる。
刀術に優れた武士だが刀術だけではなく飛び道具の扱いも我が銃兵と互角である。
弓の扱いも我が弓兵と互角、そのほかあらゆる兵科と比べて不足が見つからない。
本当に日本人は殺戮者だ。その家には刀を持たぬものは無く、
子供の頃から剣術を鍛えられ始め、壮年にいたれば手に負えなくなる。
それゆえ接近戦は日本の武士に一方的に有利で明兵では相手にならない。
日本人を有効的に殺せるのは火器のみである。
であるにも拘らず、多くの鳥銃手を擁している場合でも勝てないのは外でもない。
日本人は戦いに臨んで命を忘れるが、我が明兵は戦いに臨んで恐れて逃げるため、
その鉛子は地に堕ち、あるいは薬線が法なく、手震え、目眩み、天を仰いで空しく発射する為である。」
戚継光 「紀効新書・長刀解」
此は日本の武士が中国に攻めてきた時初めてわかったことである。
彼らは舞うような歩法を用い、前方への突進力は光が閃くようで我ら明の兵は気を奪われるのみだった。
日本人はよく躍動し、一度動き出せば丈あまり、刀の長さは五尺なので一丈五尺の間合でも攻撃される。
我が兵の剣では近づき難く、槍では遅すぎ、遭遇すればみな両断されて殺される。
これは彼らの武器が鋭利であり、さらに両手で振れるため強力で重い刀を自在に用いているためである。
こちらもただやられてばかりではない。
武士には遠くからの鳥銃が有効である。
だが武士は全く臆せず攻めたり刺したりできる至近まで突っ込んでくる
兼ねてよりこの銃手が弾を込める間に時間を取られて接近を許すことが多い
その勢いを止められない
武士の刀捌きは軽くて長く
接近を許した後の我が軍の銃手の動きは鈍重すぎる。
われわれの剣は銃を捨てて即座に対応するための有効な武器ではないのだ。
それゆえ我々も日本式の長い刀を備えるべきだ。