育て鉄道好きの子 ポケモン車両、車内にペンギン…
将来の乗客を囲い込め−。東海地方を走る私鉄が、子ども向けの電車イベントに力を入れている。
「子どもが乗れば、親も一緒」という一石二鳥をもくろむが、小さいころから自社の鉄道に愛着を持た
せ、成長後も通勤通学で利用する「鉄道の選択」を意識付ける狙いもある。
熱心なのが名鉄で、駅の裏側や駅業務を味わう「たい・けん・がく!」など、年7本程度を実施。とりわ
け、3年前から春夏に始めた人気アニメ「ポケモン」を呼び物に、沿線でスタンプを集めて特典を得るラ
リーが人気だ。参加者は初年の1万8000人から、今年は2万5000人を見込む。
「単に電車を使ってと告知しても、乗ってもらえない。乗るきっかけをつくり、楽しい体験で親近感を持
ってもらう」と鉄道事業本部の今川孝英営業推進課長は戦略を語る。5月には仮面ライダー特急を走ら
せる。
背景には、近年の利用の落ち込みと少子高齢化への心配がある。名鉄は不況の影響も受け、昨年4〜
12月の旅客収入が前年比5・9%減、輸送人員も3・2%減。近鉄も例外ではない。中京圏の鉄道利用の
割合は22%と他の大都市圏に比べて低く、自動車社会なのも悩みだ。
「子ども向け」を路線の活性化に、と狙う近鉄は昨年秋、低迷する伊勢志摩観光のてこ入れに、ペンギン
を車内に歩かせるペンギン列車を初運行し、手応えを感じた。名古屋支社員は「今春もやる。乗客を増や
す」と力を込める。
東海に先駆けた首都圏では、東武鉄道が体験型催事に加え、子ども専用のホームページを開設。広報
担当者は「将来は沿線に住んでもらえれば」と効果を描く。関西では、JR西日本が「食育」にならい「旅育」
を推進。小学生らを対象に山陽新幹線で利用率が低い「こだま」に体験乗車させ、ファンを増やす。
このような動きに、鉄道業界に詳しい鈴鹿国際大の徳田耕一客員教授は「増収にも結び付くが、車とは違
う公共交通機関の魅力を理解してもらい、乗り換えさせる狙いもある。鉄道の将来像を見据えた施策」とみ
ている。
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2010033102000219.html