コピペ全盛、先生は試される
調査研究本部主任研究員 今泉哲雄
「読書感想文」をネット検索すると、感想文の既製品が束になってヒットする。「小学生向け」「中高校生向け」「大学生向け」ときめ細かく分類してあるサイトや、
定番の「坊ちゃん」「羅生門」「こころ」などがすぐ見つかるものもある。そのまま書き写せば出来上がり。親切にも、「見つかっても自己責任で」と警告文までついている。
学校に提出するのに丸写しでは気が引けるという生徒向けには、( )の空欄を各自の発想で埋めて完成させる「テンプレート」があり、
さらに書名などいくつかの質問に答えると文が出来上がる「ジェネレーター(生成ソフト)」というイージーオーダー型もある。
文をネットから書き写したことが見つかり、教師に注意されることも、この世界では計算ずみと見える。"犬も歩けば"風に検索を続けていくと、
コピぺ(コピー&ペースト)が見つかった場合の「反省文」サイトに出くわす。「二度とこのような不始末は行いません」式のサンプルがあって、
「順序を変えたり、言葉を換えたり、アレンジをして」反省文を書くようアドバイス。悪ふざけと思いつつも、その至れり尽くせりぶりに、ただ驚くばかりだ。
「ソーカル事件」(1996年)というのがある。ネットからの書き写しではないが、米物理学者アラン・ソーカルが、
著名な哲学者や社会科学者の論文から、難解な用語を寄せ集めてパロディー論文を書いた。
本来でたらめな論文なので何を言っているのかわからないはずだが、ソーカルの思惑通り、その難解さゆえか、人文社会科学系雑誌が掲載してしまった。
この事件では、論文を読み解く力を試された雑誌の編集者が、その功績でイグ・ノーベル文学賞を受賞する落ちもついた。
子どもの感想文とはいえ、採点する教師も試されている。出来栄えを評価するだけでも大変なのに、ネットからのコピペかどうかを見定めるのは至難の業に違いない。
http://www.yomiuri.co.jp/column/kenkyu/20100324-OYT8T00319.htm?from=navlc