東欧諸国で肥満児が急増している。東西冷戦後の20年で米国的な食文化が定着し、
揚げ物や甘みの多い食品をたくさん食べるようになったからだ。
ファストフード店をやり玉に挙げる動きもあるが、子どもたちの好物で安価だけに、習慣を変えるのは簡単ではない。
ルーマニアの首都ブカレストの大手ジム。
夕方、母親に手を引かれ子どもたちが続々とやってくる。子ども向けの「体操教室」だ。「休んじゃだめよ!」。
コーチのかけ声と軽快な音楽に合わせて約1時間、子どもたちは顔を真っ赤にして体を動かし続ける。
運動後には食育の授業もある。週3回で月謝50ユーロ(約6200円)は1カ月の平均賃金が
約450ユーロ(約5万6千円)の同国では安くないが、現在会員は5〜12歳の25人。同様の教室は増えている。
ルーマニアではかつて肥満は「豊かさの象徴」だった。
東西冷戦期、粗食を強いられた庶民の間ではなおさらだった。
それが、1989年のチャウシェスク政権崩壊後、食生活が一変した。
ブカレストの研究機関によると、現在、国民の4人に1人が肥満。
特に子どもで急増し、冷戦時代の2倍以上の8%に上る。肥満の一歩手前の「太りすぎ」も含めると、
5人に1人が生活習慣病のリスクを抱えているという。
調査したコンスタンチン・ヨネスク教授(69)は「ファストフード店の急増で高カロリーの食品を安く食べる習慣が根づいた」と指摘する。
欧州連合(EU)加盟国の中で「最低ランク」の生活水準とされる同国では、所得の低い家庭ほどファストフードを利用する傾向がある。
ルーマニア政府は1月、業界の反発を押し切って「ジャンクフード税」導入方針を発表した。
ブルガリアやスロバキアでも肥満児急増が問題になっており、ブルガリア政府は昨秋、全国の学校の食堂や売店からスナック菓子、清涼飲料水を撤去させた。
EUも昨年から年間9千万ユーロ(約108億円)の予算を設けて、加盟27カ国の小学校で果物や野菜を与える助成を始めた。
http://www.asahi.com/health/news/TKY201003150469.html