【ワシントン=望月洋嗣】米国の軍事情報サイト「インサイドディフェンス・ドットコム」は
1月30日、米国防総省が2月1日に発表する「4年ごとの国防政策見直し」(QDR)の
最終版を入手したとし、全文を掲載した。
昨年12月段階の草案に比べ、中国の脅威に対する記述が大幅に減っており、中国への刺激を
避けるために表現を抑制した可能性がある。
QDRは米軍戦略の今後20年の基本指針となる重要文書で、1日までは非公開だが、サイトに
掲載された最終版にはゲーツ国防長官の署名もあり、内容は発表されるものとほぼ同じとみられる。
米軍事専門誌が報じた昨年12月時点の草案では「潜在的に敵対的な国の攻撃抑止」という項目で、
中国を北朝鮮やイランより前に例示。
先制攻撃主義 ▽過去10年で短、中距離の弾道ミサイルを1千発以上配備▽ロシアから多数の
地対空ミサイルを購入▽2007年に衛星破壊実験に成功――などと軍事的脅威を並べた。
そのうえで「中国の軍事力近代化の透明性が限られていることは、(東アジア)地域の懸念増大の
要因であり、潜在的な誤解や誤算を助長する」と指摘していた。
しかし、最終版にはこれらの記述がない。
中国の軍事拡張路線について「情報が限られているため、(軍事上の)長期的な意図について多くの
疑問が浮かぶ」と指摘しているものの、「武力衝突の危険を回避するため、意見の違いを協議する
意思疎通の回路を開いておく必要がある」などと軍事交流を重視する姿勢を強調している。
最終版にはゲーツ長官ら国防総省首脳が手を入れたとされ、中国に配慮して表現を抑制した可能性がある。
最終版は一方で、イラクとアフガニスタンで「二つの戦争」に対処する米軍が、核開発問題を
抱える北朝鮮やイラン、国際テロ、大量破壊兵器の拡散、サイバーテロなど多様な脅威に対応して
いくうえで、在外米軍基地の強化や同盟国との協力が重要だと指摘した。
日米間の懸案となっている在日米軍の再編問題に関しては、「06年の日米合意の実施に向けて
(日本と)協力を続け、日本での長期的な米軍駐留を確かにする」と明記している。
http://www.asahi.com/international/update/0131/TKY201001310327.html