【産経抄】1月15日
〈「ぼく」は主語です 「つよい」は述語です ぼくは つよい ぼくは すばらしい そうじゃないからつらい〉。
民主党の小沢一郎幹事長の今の心中を察すると、この詩が浮かんでくる。『サッちゃん』で知られる阪田
寛夫の『練習問題』という作品だ。
▼自身の資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐる疑惑について、小沢氏はこれまで、説明を一切して
こなかった。なかでも秘書に渡したとされる4億円の出どころは、謎に包まれたままだ。12日の記者会見でも、
木で鼻をくくったような発言に終始した。
▼井山裕太名人と碁を打ったり、秘書と居酒屋へ繰り出す時間はあっても、多忙を理由に、東京地検特捜部
の事情聴取にも応じなかった。業を煮やしたのか、特捜部はついに強制捜査に踏み切った。平然とした態度の
裏で、捜査の行方に神経をとがらせているとの指摘もある。
▼小沢氏が一人になったとき、「オレは強い」と自分に言い聞かせる姿を想像する。「剛腕」の2文字が常に
つきまとってきた政治家の内面は、意外にデリケートなのかもしれない。そのギャップを抱えたまま生きて
いくのは、さぞ「つらい」ことだろう。思い切って真相をぶちまけたら、楽になるだろうに。
▼実は詩のテーマは初恋だ。〈ぼくは だれそれが 好き ぼくは だれそれを 好き どの言い方でもかまい
ません でもそのひとの名は 言えない〉。初恋の人の名前を、自分の胸にしまい込む姿はいじらしい。
▼しかし、小沢氏の威光を恐れて、その名を口に出すのもはばかる、民主党議員の姿を見るのは、「つらい」。
「オレは強い」と呪文でも唱えながら、まなじりを決して小沢氏の政治責任を問う。そんな気骨のある政治家はいないのか。
ttp://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100115/stt1001150247001-n1.htm 依頼11