里山を背負って黒瓦に白壁の古民家が点在する。田畑をぬって流れる小川にはヤマメが泳ぎ、水車が回る……。
まるで30、40年前の懐かしい風景。奥能登・能登町の中心部から約10キロ、そんな山あいに、農家民宿24軒のネットワーク「春蘭(しゅん・らん)の里」はある。
中心となる宮地・鮭尾地区は、携帯電話すら通じない200人ほどの集落だ。その里に、自然と田舎暮らし体験を求め、年約3千人が訪れる。
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里の誕生は96年。両地区は農業以外に目立った産業はなく、1965年に502人いた住民は半減していた。「このままでは集落がなくなってしまう」。
地元農家ら7人が実行委員会をつくり、地域に自生する春蘭の販売を皮切りに、山里の魅力を発信。多田喜一郎さん(61)が民宿第1号「春蘭の宿」を始めた。
最初は「名所や見どころもないのに、だれが来る」と言われた。こだわったのは、地元ならではのもてなしだ。
田植えや川遊び、まき割りからする五右衛門風呂体験。料理は山菜、野イチゴ……。いわば、あるものを生かしきる天然のテーマパーク。
「こんな山あいでも『買ってきた刺し身が一番のごちそう』という考えが根強い。でも、たくあんでも地元の大根で漬けたモノが一番おいしい。
都会のお客さんも地元のモノを求めているはず」と多田さん。
客はくつろげるようにと1日1組限定。食後は、囲炉裏を囲んで客との会話がはずむ。2人で泊まれば、2食付き1人1万500円。
高い山や大きな川はなくても「また来たくなるね」と言ってくれる。それが励みだ。
03年の能登空港開港など追い風もあり、メンバーの民宿は周辺にも広がった。宮地地区では06年4月、廃校が宿泊所に生まれ変わった。
修学旅行生など一時に80人の子どもを受け入れている。
以下ソース
http://mytown.asahi.com/ishikawa/news.php?k_id=18000001001030001