「原監督はわかってなねーなーっていう感じですね。バカみたい。」
記者会見の席にはイチローが憤然とした表情で座っていた。頭は金髪になっていた。
マスコミは、その姿を1998年のフランスワールドカップで代表漏れし、“抗議の金髪”をしたカズこと三浦和義とダブらせていた。
しかし、カズと決定的に違うのはイチローのその『落ちぶれぶり』だった。
2012年に人類滅亡が起こるというモチーフの映画「2012」があったが、それはイチローの身にだけ降りかかった。
メジャーリーグ機構が2ルールを改正し、2012年シーズンから内野安打を野選とすることを定めた。
困ったのはイチローだ。
それまでの高打率の30%を内野安打で補ってきたイチローにとってそのルール改正は自身のベースボールの“滅亡”を意味していた。
案の定、打率は2割台前半を彷徨うようになった。
強引に長打を狙うバッティングスタイルにチャレンジするも失敗、チームメイトからはおろか、ファンからも罵声を浴びせられるようになった。
打率2割2分7厘、4本塁打、33打点―これがイチローの2012年の成績である。
そして今年のWBC、原終身日本代表監督はイチローの召集を見送った。
球界からも、ファンからも異論は聞こえなかった…
目に涙を溜め、精一杯強がりながら原監督を批判する姿に、会場に居た記者たちからは哀れみと失笑がこだました。
代表から漏れ、悲劇のヒーローになったカズとは違う空気が、イチローの周囲を取り囲んでいた。
今後、イチローは野球界から身を引き、きしめん屋に転身するそうだ。
野球界での洗礼を忘れず、頑張って欲しいと思う。