<味ある記>加賀丸いも(石川県能美市) 次代の育成にも粘り強く
2009年12月12日
白山連峰の頂が雪化粧する十一月上旬、石川県能美(のみ)市の手取川周辺では特産「加賀丸いも」の収穫が始まる。
うねから掘り出される丸いもは、ジャガイモを黒くしたような外見だが、中は純白。強い粘りが特徴だ。
市内の料亭・八松苑(えん)で一品料理をお願いした。すりおろした丸いもに卵白、薄口しょうゆ、
クズあんで味付けした「ウナギの上用蒸し」。精進明けの料理の一品という。
素朴な食感とあんのとろみがよく合って、上品な味わいだ。「粘りがあるから、あんが浮いて、
ふんわりした仕上がりになります。保存も利くから、年中使えます」と料理長の川田義明さん。
原種は、三重県のイセイモ。大正時代から栽培が行われていたが、昭和九(一九三四)年に手取川が大洪水を起こし、
その扇状地で粘土と砂がほどよく混ざって、丸い形のものがよく取れるようになった。
連作すると地力を奪うため、農地を分けて米と交互に栽培する。
同市のJA根上(ねあがり)の年間生産高は約九十トン。大半は、お歳暮用だ。自然薯(じねんじょ)並みの粘りと、
箱詰めしやすい形が珍重されている。JA根上でサイズを分け、共同出荷する。営農販売課長の飯田忠利さんは
「水稲よりも単価は高いけど、手がかかることもあって、農家は徐々に減っています。でも若い人たちががんばってくれている」と話す。
若手のリーダー・岡元豊さん(40)は、ことしの第六十八回中日農業賞の農林水産大臣賞に輝いた。
パソコンを駆使して経営計画と経営分析を行うなど、効率的な「魅力ある農業」を実践する一方、
小学生の農業体験にも力を入れ、食の大切さを伝える活動などが評価された。
「子どもたちに掘ってもらい、一緒に食べる体験を通して、丸いもをアピールしています。
この就職難の中、大人になったときに、農業をやってみようかな、と思う子が出てくれば…。
いもづくりも後継者育成も、時間をかけなくては」と笑う。
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2009121202000060.html