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179 泡立て器(東京都)
スレタイ:
毎日新聞「今、私たちは世界の現実を正しく伝えているのか」

本文:
余録:68年前の「スミス」

J・スチュアート主演の「スミス都へ行く」は政治腐敗と戦う地方出身の議員を描いた39年の米映画だ。
作家の野口冨士男は真珠湾攻撃が伝えられた41年12月8日の午後に東京・新宿の映画館でそれを見たと記している

▲映画は野口を含め10人を少し超える観客を相手に、ほそぼそと上映された。
「そのあいだにも右隣のカフェからはまことに傍若無人な感じで、日本の緒戦を告げるラジオ放送と軍艦マーチが間断なく鳴りひびいて来て、ともすればスクリーンの声を掻(か)き消してしまうのであった」

▲C・グラント主演「明日への戦ひ」、W・ホールデン主演「アリゾナ」、R・ミランド主演「空の要塞(ようさい)」……
当時ユナイトに勤めていた淀川長治によれば開戦前夜、米映画は8作品が上映され、興行的にも不安なく客の入りはよかったという

▲野口は開戦により米映画が見られなくなると思って新宿に駆けつけたところ、最後の上映に間に合ったようなのだ。
「観(み)おわって外に出ると、灯火管制の新宿の繁華街は真暗で人影も乏しく、夜の冷気が肌を裂いた」。世界は変わっていた

▲米国民主主義の理想を説くスミスの演説に感動した観客も、戦禍の門をくぐった68年前の今日である。
米映画のファンの中には開戦を決めた軍人よりもはるかに日米の実力差を肌で感じる人もいたろう。
1対10といわれる当時の国力だった

▲満州事変から日中戦争を経てこの日にいたる日本の指導者の世界認識の狂いはなぜ日増しに大きくなったのか。
この問いはもちろん新聞にはねかえってくる。
では今、私たちは世界の現実を正しく伝えているのか−−新聞にたずさわる者の12月8日の自問である。

ttp://mainichi.jp/select/opinion/yoroku/index.html?link_id=OE001