余録:普天間解決先送り
「それはここで速断せずに、もう少し煮詰めて……」。会議で問題を先送りするときの決まり文句だ。
赤瀬川原平さんは著書「優柔不断術」で、これぞ狭い島国の農耕社会が生んだ知恵という。時間に
仕事をしてもらうのだ▲「鍋の中でというより、一本の時間の中でぐつぐつと煮詰める。そうすると
その件が、ほどよくこなれて、柔らかくなり、味がしみ込み、よくなじんで、ムリのない結論に
仕上がっていく。……なんとなく結論を先送りしているうちに、……とにかくいつの間にか解決している」
▲年季の入った日本人の問題先送り術である。それが政治でも通用したのは、以前なら大方の問題は
先送りすれば経済成長が解決したからだ。だが今や国内問題もそうはいかない上に、ことは名うての
優柔不断嫌いの米国相手の外交である▲沖縄の米軍普天間飛行場移設問題をめぐり鳩山由紀夫
首相は年内の決着を見送る構えだという。関係閣僚には日米が合意している名護市辺野古に代わる
移設先探しを指示したが、その背景には連立離脱をほのめかした社民党への配慮がある
▲あきれるのはこの問題での首相はじめ閣僚の変転極まりない発言だ。それもこれもいずれうまく
煮詰まると首相は考えているようだが、ことは過去の外交合意を見直す力業だ。米国が交渉に応じ、
沖縄県民が受け入れられる方策への首相自身の見通しなしにうまくいくはずがない▲先の見通しを
欠いた時間稼ぎは、米国の不信を高め、沖縄の怒りをつのらせ、しかも肝心の移設は何一つ解決しない
最悪の結果を招きかねない。煮込んだあげくに形もなくなるような首相のリーダーシップはごめんだ。
http://mainichi.jp/select/opinion/yoroku/news/20091205k0000m070131000c.html 依頼159