発信箱:大統領のお辞儀=福本容子(経済部)
1秒もない出来事に、全米のメディアやインターネットのブログが大騒ぎだった。訪日したオバマ大統領が
天皇陛下との握手で深々と頭を下げた、あのお辞儀である。
けしからん派の主張。(1)アメリカの大統領は頭を下げるもんじゃない(2)外国人にお辞儀とは国家への背信だ
(3)イギリスの女王にしなかったお辞儀をサウジアラビアの国王(今年4月)や日本の天皇にしたのが不愉快
(4)アメリカに戦争をしかけ負けた国の天皇に最敬礼は屈辱的(5)チェイニー前副大統領は直立のまま握手した−−
大体こんな感じ。
イギリスでは、首から上だけペコリが男性の正しいお辞儀。今年4月の映像をチェックしたら、オバマさんは一瞬だけど
女王の前でちゃんとやっていた。サウジの王様へのお辞儀は、よく見ると天皇陛下へのと違う。ひざが
曲がり両足が前後にずれている。周囲の人が笑顔で大統領の手の付近を見ているから、何か言ったり、したりしたのかも。
きっとその場その場でチャーミングに振る舞うサービス精神なのだ。アメリカは変わったよ、高圧的じゃないよ、の
ジェスチャーもありそう。
正しく敬意を表した大統領への非難は筋違い、という黒人男性ブロガー、ゼニー・アブラハムさんの解説がいい。
論争に火をつけたのがフォックス・ニュースという保守系テレビだった点に着目。ミニスカートで露出度いっぱいの
女性キャスターに、「このお辞儀の角度って90度? ワオ」と驚いてみさせ、隣の保守派白人男性が「なんて弱腰だ」とあおる。
そんな相変わらずのマッチョ志向が騒ぎの根っこにあるのだと。
「チェンジ」について行きたくない人たちは、どこの世にもいるみたい。
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20091120k0000m070156000c.html