『科学』傷だらけ iPS細胞生んだ事業や科学未来館
2009年11月14日 朝刊
「国が掲げる科学技術立国が揺らぎかねない」。
十三日の行政刷新会議の事業仕分けで、科学技術関連の事業が続々とカットの判定を受けた。
「不要不急の事業」を削ることが仕分けの目的とはいえ、将来、日本の科学技術研究を担う若手にも余波が及ぶ。
「頭脳流出に拍車がかかる」。関係者に危機感が広がった。
「科学技術への理解増進を否定するのでしょうか」。日本科学未来館(東京・青海)の館長を務める元宇宙飛行士の毛利衛さんが口調を強めた。
同館も仕分け対象になり、毛利さん自ら仕分け人と対峙(たいじ)した。
だが、判定は「予算削減」。毛利さんは、組織改革の必要性などを主張できたことに「プラスに考えていきたい」などと語った。
ほかに審査を受けたのは、次世代スーパーコンピューター(スパコン)、和歌山毒カレー事件で使用されたヒ素の科学鑑定に威力を発揮した
大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県)、科学掘削船「ちきゅう」など。
仕分け人は「経費削減の余地がある」など次々と厳しく指摘。
「無傷」な事業はなく、いずれも廃止や予算への計上見送りや削減が求められた。
「こちらから事業の意義などを話させてもらえるのかと思ったが遮られてしまった」と話すのは、独立行政法人・科学技術振興機構の北沢宏一理事長。
先端研究に助成する競争的資金事業は同機構や文部科学省などが行っているが、
仕分け人は「重複しており、総予算が膨らんでいる」と判断。一元化も含めて縮小することを求めた。
北沢理事長は、一時間という審査時間の短さを挙げ、
「この事業資金による研究で生まれた人工多能性幹細胞(iPS細胞)などの成果をアピールできなかった」と残念がった。
ttp://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009111402000066.html