【ワシントン=勝田敏彦、ロサンゼルス=堀内隆】オバマ大統領が新型の豚インフルエンザの緊急事態を宣言した米国で、ワクチンをめぐる混乱が続いている。
48州に流行が広がり、ワクチンは不足。ロサンゼルス近郊では無保険の貧困層への接種に対象外の市民が列をつくっている。
一方、ニューヨーク州では医療従事者へのワクチン接種を義務づけていたが、現場の反発などで中止になった。
疾病対策センター(CDC)のフリーデン所長は10月30日に記者会見し、「(ワクチンの)需要と供給の差は小さくなってきている」と釈明した。
同所長はその3日前にも記者会見を開き、「接種が必要な人の全員に必ず行き渡る」と防戦に懸命だ。
厚生省のセベリウス長官は当初、10月末までに1億2千万回分のワクチンが調達できると強弁してきたが、製造の遅れで同月28日には2320万回分へと大幅に下方修正。米政府の見通しの甘さに批判が高まっている。
ロサンゼルス郡では、公民館などに設けられた臨時クリニックの無料接種で混雑が続いている。
子どもや妊婦、基礎疾患のある人など優先接種の対象ながら医療保険に入っていない貧困層向けだが、医療保険に入っていても、かかりつけ医を通じたワクチン接種を受けられなかった人々も押しかけ、会場はどこも3〜5時間待ちの行列。
郡保健局の担当者が「優先接種の対象者以外は受けられません」と繰り返し呼びかけていた。
一方、CNNなどが10月中旬に実施した世論調査によると、43%が新型インフルエンザのワクチンは「安全ではない」と回答。
76年の豚インフルエンザ流行時、副作用とみられる報告が相次いだ記憶が影響しているとみられる。
ニューヨーク州は医療従事者への新型インフルワクチン接種を義務づけていたが、10月下旬に中止を発表した。
副作用への不安から現場で反発の声が出たうえ、裁判も起こされていた。ただし、州当局は「ワクチン不足による中止」と説明している。
2009年11月4日19時22分
http://www.asahi.com/international/update/1101/TKY200911010259.html 無料の豚インフルワクチン接種会場で順番を待つ人たち=米ロサンゼルス郡コンプトン、堀内写す
http://www.asahi.com/international/update/1101/images/TKY200911010288.jpg