たいまつ手に「走り詣り」 雷公神社の火祭り
和歌山県串本町樫野の雷公(なるかみ)神社で9日夜、伝統の火祭り神事があった。
若者らが持つたいまつの炎が、火の粉を散らしながら、勇壮に地区を駆け巡った。
火祭り神事は昔、浜に流れ着いたご神体を、寺の住職がたいまつを掲げて迎えたことが由来とされ、宵宮に行われる。
豊漁や航海安全を祈願して、同神社と近くの大竜寺に詣る神仏和合の珍しい祭り。
例年、8日が宵宮で9日が本宮だが、今年は台風18号のため、1日延期した。地元の若者ら11人と航空自衛隊串本分屯基地の隊員ら11人が参加した。
戦後の一時期には、地元の若者が100人ぐらい参加したが、若者が少なくなっており、自衛隊の隊員らも参加している。
午後9時前、神社から迎え火が出発。約1キロ離れた樫野集会所で若者らが持つ長さ4〜5メートルの竹を束ねたたいまつに火が分けられた。
若者らは燃えさかるたいまつを手に「詣るぞー」と力強く声を掛けながら、神社に向かって走った。
神社では拝殿の前まで石段を駆け上がり、「詣ったぞー」と口々に叫びながら、引き返した。
途中、大竜寺に立ち寄って詣り、再び集会所に戻った。
沿道には、カメラマンや地元の人の姿も多く、若者らの勇姿と暗闇に流れる幻想的な炎の帯を見守った。
燃え残りのたいまつは、魔よけとして1年間、家に保存する風習があり、持ち帰る若者もいた。
20歳のころから参加しているという地元の鈴木誠さん(32)は「しんどかった」と漏らしながらも充実した様子。
栃木県出身で、航空自衛隊の皆川信爾さん(28)は6年ぶり2回目の参加。
「こうして地元の祭りに参加させてもらえるのは貴重な経験で楽しい。熱かった」と汗を光らせていた。
紀伊民報
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=176785 たいまつを手に、火の粉を散らしながら階段を駆け上がる若者(9日夜、和歌山県串本町樫野で)
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/newsphoto/1767851.jpg