詩神のささやきを聴く
世界には「○○の詩人」と呼ばれる人が各地にいる。
世界遺産に登録されたスペインのサグラダ・ファミリア教会の設計者ガウディは「建築の詩人」、
画家ミロは「絵画の詩人」、チェロのカザルスは「音楽の詩人」と呼ばれた。
米国・ヨセミテ渓谷の風景で知られる写真家アンセル・アダムズの異名は「写真の詩人」である。
だれでも一度は詩を書いてみたいと思ったことがあるだろう。では、どうすれば詩人になれるのか。
本書はアンパンマンを生んだ漫画家やなせたかしさんが77年に講談社から出した
『詩とメルヘンの世界』を改訂し、やなせさんの90歳の誕生日にあわせて復刊した。
「大切なのは詩の勉強ではなく激情だ。面白く愉快な生き方をすることが先決だ」と説く。
詩の入門書は数あるが、これほどスラスラ読める本は珍しい。
恋するとき人がみな詩人になるのは「情熱が心の火を燃やすために、
詩神のささやきを聴くことができる」からだと、
それ自体が詩的な珠玉の文句がちりばめられる。
だれにも詩心はある。形式ではなく心に響く詩を。
さあ、今日からあなたも詩人だ!(伊藤千尋)