>>1 ●ルーツは白樺派のヒロイン
清純派のルーツは、大正期に活躍した武者小路実篤や、有島武郎など「白樺派」の恋愛小説に登場するヒロイン像にさかのぼる。
彼女たちは清楚で可憐で小悪魔的だが、人間らしい内面の葛藤を見せることはない。決まって恋に悩み苦しむ主人公の男性とは大違いだ。
「白樺派は、文明開化によって移入されたキリスト教文化に多大な影響を受けました。それは、永遠の処女である聖母マリアを崇拝する〈処女信仰〉に通じます。
古来、日本には処女をありがたがる風習はありませんでしたが、洋尊和卑の時代の風潮により、次第に浸透していった。
そして、娯楽の中心が映画となって白樺派作品の映像化により、ステレオタイプな清純派像が形成されたのです」
●最後は幼児化が待っている
誕生から100年足らず。「清純派は男性を幼児化させる」と、矢幡氏は続ける。
「純粋無垢(むく)な女性像を追い求めていけば、世の事象を〈シロ=善〉と〈クロ=悪〉に極端に二分化する発想に結びつく。
社会には〈グレー〉な事柄も多いのに、それを受け止めようとせず、内的葛藤から逃れてしまう。
専門的に『妄想―分裂態勢』と呼ぶ状態で、本来は生後6カ月までの乳児の心的状況を意味します。
母乳を与えられている時が〈シロ〉で、欲求不満を感じる時が〈クロ〉です。逆に〈シロ〉と思っていたことが、実は〈クロ〉だと知るや、
裏切られた思いから、攻撃的な批判を加え出すのです」
のりピーに「裏切られた」と感じた独身男は、自分の生き方を見つめ直すべきだ。