【精神障害者の描いた絵】 妄想や幻覚を形に アロイーズ展/「目覚めぬ夢」展

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何のために描くのか。そんな問いかけを含む二つの展覧会が、都内で開かれている。
どちらも精神を病んだ人の作品を展示する。

一つがワタリウム美術館の「アロイーズ展」。スイス生まれのアロイーズ・コルバス(1886〜1964)は、
フランスの画家デュビュッフェに見いだされた。「アール・ブリュット(生の芸術)」の代表的な画家として後日、
世界的に有名になった。

今展は、アロイーズ研究の第一人者のジャクリーヌ・ポレフォレル医師が作品を選んだ。
85点を見せる本格的な回顧展だ。

31歳で統合失調症と診断されたアロイーズが描くのは、官能的な愛の世界だ。
赤い色鉛筆を使って歌劇のような世界を生みだし、女と男が抱き合っていたり、キスをしていたり。
あくまで中心は女性で、男は添え物でしかない。どの青い目も宇宙人のように巨大だ。

65〜74歳の間に描いた「女性伍長デュー・ビエン・フー/花咲く芝生の中で横たわった」(ステック氏蔵)では、
乳房が余白を埋め尽くす。次第に絵の密度が増すが、それが病気のせいなのか、腕が上達したからなのかは分からない。

もう一つがO(オー)美術館の「目覚めぬ夢」展。日韓で計5人の作者は、みな精神を病んだ人たちだ。
アロイーズより大まかな表現だが、共通点もある。

高橋重美はボールペンで鬼のように真っ赤な肌の人間を描き、山崎健一は定規とコンパスで図面のような絵を記す。
みな、自分だけの妄想や幻覚に、絵で形を与えている。

精神を病んだ人たちは、絵の中で、傷んだ自己を再構築しているのかもしれない。
アロイーズの作品は、最晩年になると高い値がついた。周囲がもっと描かせようと介入すると、
逆に、それまでのような絵が描けなくなったという。火が消えるように画家は77年の生涯を終えた。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200907080231.html

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