中世の代表的な山城で、織田信長軍の前に滅びた丹波市春日町の黒井城が、再び“落城”の危機に直面している。平成の敵はイノシシ。城跡の辺り一面を掘り返し、石垣を崩そうとしている。神出鬼没で戦国武将より手ごわく、
手を焼く市教委は「悲劇を繰り返させない」と周辺を金網で囲み、侵入を防ぐ策に出た。
標高356メートルにある黒井城は、戦国時代に「丹波の赤鬼」の名で知られた反織田勢力の名将荻野(赤井)直正の居城で、激戦の末に攻め滅ぼされた。今は、本丸、二の丸、三の丸跡と石垣などが残るだけだが、
戦国時代の山城の原形をとどめているのが貴重として1989年、国の史跡に指定された。ハイカーらが訪れる観光地となっている。
ところが、5年ほど前から夜間に出没するイノシシが敷地内を掘り返し始めた。餌のミミズなどを探すためらしいが、石垣の基礎部まで侵入。景観が損なわれる上、石垣崩壊の危険がでてきた。
苦慮した市教委は文化庁と協議。2月末、緊急措置として金網状の「獣害防護柵」を巡らす計画が決まった。高さ約1・8メートル、延長約400メートルの金網を巡らし、本丸、二の丸、三の丸などを囲い込む。
遺跡を壊さず、景観にも配慮し、山林の斜面に設置を進めた。城に動物対策の柵を設ける例は全国でも珍しく、市教委は「敵は野武士ならぬ野生動物だが、いわば現代の城壁」と話す。6月末に設置を終えた。さて、攻防の行方は…。(仲井雅史)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0002097512.shtml