「人間関係 神経やられる」 熊本、島根 刑務所ルポ 初犯者の個室は無施錠も 厳しい規律 狭い雑居房
塀の中‐。犯罪に関係なく暮らす人が「刑務所」に足を踏み入れる機会はほとんどない。裁判で実刑を受けた人は、塀の中で
どういう生活をしているのか。殺人や強盗などの凶悪事件を起こした受刑者を主に収容する熊本市の熊本刑務所と、初犯で
刑期の軽い受刑者らを収容する島根県浜田市の島根あさひ社会復帰促進センターを訪ねた。
「イッチニー、イッチニー」。髪を刈り上げた男たちの野太い大声が廊下中に響いた。
熊本刑務所は、収容者約670人のうち約130人が無期懲役。受刑者は集団で移動する際、縦一列で整然と行進する。
「だらだら歩くのは他の受刑者とトラブルを起こすもと。事故防止のため」と刑務官。規律は厳しい。
午前6時40分に起床し、すぐに朝食。時間は約10分。受刑者は無言でごはんをかき込む。食事後も、歯磨きなどの
身支度をあわただしく済ませ、作業工場に向かった。
午前7時40分、薄緑色の作業着の25人が入った第11工場は、たんすやソファなどの木工製品を作っている。
長い人で15年続けているという。報奨金は最も熟練の1等工でも時給43円50銭、刑務所に入りたての10等工は
時給6円10銭しかない。ほかに加算金もあるが、わずかだ。
作業中の私語は禁止。刑務官に見つかれば懲罰の対象だ。会話が必要な場合は挙手し、担当官にいちいち許可を求める。
トイレも時間が決まっていて自由に行けない。
受刑者6人が生活する雑居房を訪ねた。広さは約10畳。玄関部分に「西日本」などと書いた札があり、個人で購入している
新聞名という。壁の棚にも、個人購入の宗教本や法律書、雑誌などが並んでいた。
房内にトイレはあるが、戸の上半分は透明で、上半身が丸見えだ。ここにプライバシーは無く、元受刑者が「雑居房内の
人間関係で神経がやられる」と話していたのを思い起こした。
塀の外へ出る際、刑務職員が言った。「ここから何10年も出ていない受刑者もいるんですよ」。物理的にも、精神的にも、
受刑者と社会を隔絶するコンクリートの塀。5メートルほどだが、ひときわ高く思えた。
西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/106919