三カ月に一度、東京都武蔵村山市の市民会館の一室が、歌声喫茶に変わる。
主催するのは「武蔵村山男声合唱団」。喫茶とはいっても、あるのはささやかなカップコーヒーや茶菓子だけだ。
それなのに、団員六人で始めた歌声喫茶は今、百人近くの参加者が集まるほど大きくなった。 (西川正志)
九回目の開催となった七日、会場はこの日も六十〜七十代の参加者たちの熱気に包まれていた。
女性が多く、九割を占める。
「大勢で歌うのはカラオケとは違う魅力がある。自分のエネルギーがなくなるぐらい、参加者の熱気がすごいんです」
と汗をぬぐうのは、ピアノを担当する山口栄さん(56)。参加者が受付で五百円を払うと、手製の歌集を渡される。
中には一九四〇〜七〇年代のヒット曲から童謡まで百七曲。この歌集を手に、約二時間で三十曲以上を歌い続ける。
「こんなに古い歌を知っているみなさんも相当古いねえ」「次はみなさんの声にぴったり。かえるの歌」。
司会進行役の荒井勇三郎さん(74)が辛口トークを交えるたび、会場に笑い声が広がる。
同市に住む高坂喜勢子さん(73)は「ここに来ると若いころに戻ったみたい。二時間があっという間に過ぎちゃう」。
歌声喫茶が始まったのは一昨年六月。当時、合唱団はメンバーが六人で存続の危機にあり、新メンバーを勧誘するため、
すがる思いで開催した。市の広報紙に数行の告知を載せただけだったが、初回から四十人以上の参加者が集まった。
その後、参加者の口コミで人気に火がついた。
しかし、合唱団は当初の目的を達成できていない。
参加者が百人を超えても、歌声喫茶がきっかけで入団してくれる男性は、いまだに現れないからだ。
荒井さんは「それでもいいんです。これだけ多くの人が楽しみにしてくれているんだから。もうやめられない」とうれしそうに話した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009061802000221.html 熱気ムンムンの会場
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/images/PK2009061802100145_size0.jpg