1 :
ユキノシタ(鹿児島県):
1000ならカワイイ彼女出来る
3 :
ヤマエンゴサク(東京都):2009/06/13(土) 00:52:46.14 ID:y4LMA6Jx
よくやった
4 :
ビオラ(東京都):2009/06/13(土) 00:52:48.02 ID:vJwr4VHQ
記念カキコ
1001とか久しぶり
6 :
シラー・カンパヌラータ(関西地方):2009/06/13(土) 00:52:50.32 ID:JGe7L2fm
俺の生き甲斐が
7 :
ウグイスカグラ(関西地方):2009/06/13(土) 00:52:51.70 ID:6obo3ALf
きやがれ
なんなのこれ
9 :
クサノオウ(岐阜県):2009/06/13(土) 00:52:55.63 ID:9kN9EViv
遅いな
10 :
ワスレナグサ(愛知県):2009/06/13(土) 00:52:56.93 ID:Mw0tNN1V
11 :
ビオラ(埼玉県):2009/06/13(土) 00:53:00.61 ID:depqNaIZ
かもん
和泉ちゃんは流れに逆らわず、まるでダンスでも踊るように優雅な動きを見せる。
「あ、これなんて可愛いですよ、ほら」
『え?』
てっきり、キツネがマリアちゃんに憑いたのかと思っていたけど…
「神様だよ」
その舞も、歌声も、神への捧げものにふさわしい美しさに充ち満ちていた。
僕も、あんな感じだったんだろうか。
まだー?
「わたくしは、目の前の世界を、旦那様がいるこの世界を愛しています」
その想いは、涙石を通して確かな力となり、僕たちをこの世界から別の世界に運んでくれるのだ、と。
ただ弓を引けばいいっていうものじゃないだろうし…本当にここでいいのかどうかもわからない。
「どうだか。で、真面目な話、あれから大丈夫だった?」
彼女のご両親は本当に殺されたのか。
ポン、ポン――と、いかにもな音が流れ出す。
「ひとりではありませんでしたわ。ただ…その方はもう、役目を終えてあなたの側にはいません」
彼女の体が僕に向かい倒れ込んできた。
「うん。大事を取って病院のほうに入るみたい」
が、そんなこと、あり得るんだろうか。
洗い物の手を止め、外に出たけど、誰もいない。
暑いものは、暑い。
「雪さん、ちょっと…ごめん」
…そんな授業に限って当てられるし。
彼女はスタイルがいいから、そういうことをされると目のやり場に困ってしまう。
「無理だよ…」
助けてもらっておきながら、彼女が、そうなのだと思った。
「それもする」
「僕はもう行くから。本当によく考えて、どうしても他に行き場所がなかったら…うちに来て」
「透矢…これ…」
僕も走った。
これでは、こっちが先に参ってしまう。
「僕が願ったから、ずっとひとりで僕を見守っていてくれたの?」
「馬鹿! 迷惑になることなんかないって何度も言ったはずじゃないか」
「アリス、それって…」
また、無言電話…
「なに、知り合い?」
そういえば、彼女の読んでいた本には妙に山ノ民がつきまとっていた。
「はい。本当にすみません。透矢さんのお口に…おしっこなんて」
「はは、和泉ちゃんがあんな声をあげるなんて思わなかったな」
「庄一くん!」
先に手を離してくれる優しい子はどっちだろう?
いつしか彼女の口からもれるのは、かすかな呼吸の音だけになっていた。
まるで、彼女の名前のように…
「ふたり分?」
「そうだね…」
「ぃ……っっ」
「でもさ、和泉ちゃんはいいの? 花梨や庄一ともお別れだよ」
「まあ、なんとなくわかるよ」
僕らより、ひと足もふた足も先に到着した和泉ちゃんは、今も、ひとりだけ平然とした表情のままだ。
僕は、元気良く跳ねる小さなふたりを遠巻きにながめ、笑った。
日が沈むまで、何度もキスをして。
僕は、彼女のヘッドドレスを外し、あふれる涙を手で拭ってあげた。
彼女は、記憶を無くしていた。
「あのー、和泉ちゃん、その本なら俺も読んだんだけど」
「…そんなもの…かもしれないね」
考えていると、庄一がやってきた。
「そう言われるとよけいにねぇ」
――さようなら。
「気色悪い。せめてアリスって呼んで」
なぜか父さんの書斎に埋もれていて、探すのにえらく手こずったらしい。
建物に価値があるなら、建物の入り口…というより、敷地自体が立ち入り禁止になりそうなものだ。
(寝返りでも、うったかな?)
「おかえりなさい、透矢さん」
「何に、入られたの?」
「ぅ…あーあ、いいのかな? 一生めんどうを見て下さいって、言ってるようなものなのに」
「いいよ…それが普通なんだもん。待ち合わせがあるのに、ごめんね」
「もう一回、してもいい?」
忘れきることが出来なかった。
「透矢との関係、壊したくなかった」
そんな考えが頭をよぎっておかしくなった。
「やっぱり、見たんですのね」
「なつかしい…?」
「おい、なんとか…」
「はは…人が悪いな」
「僕もだよ」
自分のほっぺたを、とんとん、と指先でつつく。
87 :
ハナムグラ(catv?):2009/06/13(土) 00:53:10.99 ID:yVmD54wz
ばっちこーい!
「つかないよね。庄一くんじゃないもん」
「…雪の幸せは、透矢さんのよろこぶ顔を見せていただくことですよ」
「牧野さん、もっと左ー」
巻き上がった砂煙の中、不愉快そうに顔をしかめた雪さんの言葉に、僕は深々とうなずいていた。
「透矢ちゃーん、今のだぁれ?」
「もう、透矢ったら、って! 二人とも、何してんの!?」
白い、
でも、だからこそ、気分転換にちょうどいいだろう。
「っっ…」
「あ、すみません…いいんです。もともとこういう感じでしたし」
授業のある時のことは、わからない。
花梨が、自分の顔を両手で撫でる…思い出すからやめてほしい。
100 :
ビオラ(東京都):2009/06/13(土) 00:53:11.93 ID:vJwr4VHQ
おせーぞw
「ああ、調子どう?」
別に、珍しくもない。
こっくり、無言でうなずいた。
梓の木で作った弓――梓弓。
「だいぶ、お疲れのようですね」
「透矢さんがいてくださったから、平気でいられたんですよ」
「退院の日が決まりました」
「うん。ほら、ここに住んでる…」
にっこり、顔を見合わせて、お互いの口をふさいだ。
今日は、さすがに疲れたな――
雪さんと牧野さん、ふたりがかりで砂をはらわれてるし…なんだかうらやましい。
「もう、言ってるそばから会うなんて」
もう寝ろよw
ただ、確かなのは、恐らく、あの人はもう助からないっていうこと――
僕の夢だから、僕の知っていることで構成されている、それだけなんじゃないか?
どうせなら一人の写真も欲しい――料理してるところとか、無理に撮ったら怒るかな…?
「ちょっと、よくわからないかな」
「あの、取り込み中に悪いんだけど…」
「ふーん。あのさ、女の人って、どうしてそういう体なの?」
「うん…っ…透矢くぅ…ん」
「遊びじゃないの、集中して」
「ぅぅ…ちっちゃくって、ごめんなさい」
「思ったより、悲しまないんだね」
「そんなことは。最近、娘さんとも会ってなかったですし…。ねえ、牧野さん」
「最初は嫌だろうけど、いちど、試しに来てみたら」
僕たちは、あの日、夕陽をバックにしたような、長く優しい口づけを交わした。
「…そういえば、おんなじ名前だ」
たずねようとした拍子に、鐘の音。
「泣かないで、牧野さん」
「ううん、もっと出してもいいよ。その…おいしかったし」
なんだ…
なのに、どうして僕は、その手を離してしまったんだ?
「そんな理由で叩かないでよ」
彼女は僕の言葉に耳を貸さず、手加減なしに腕を引っ張った。
「よほどのこと、か」
「僕も、よくわからないんだよね」
次のつづらも、その次のつづらも同じ。
「馬鹿だよ。だから、もうちょっとだけ、いい?」
うるんだ瞳に見つめられて、アリスちゃんは不満そうなため息と共に、僕のそばへ歩み寄ると、
と、僕の返事を待たずにアリスが立ち上がる。
「でも、約束だからね」
「んー、確かに」
「寂しい、ですか?」
「す、すみません! あのぅ…私と…ですか? ふたり一緒にとかじゃなくて」
本の一冊一冊、棚の上の段ボール、棚の裏側――
そういえば、彼女にとって雪さんは、同年代の女の子、雪ちゃんでしかなかった。
闇に染まった空の上、やけにうすっぺらな三日月が、ぽつんと、頼りない姿を浮かべている。
1000
「もうちょっとだけ、待って」
だけど…この姉妹に、僕なんかが、口を挟むまでもなかった。
「あのさ、きっかけは、やっぱりきのうの失敗?」
152 :
ロウバイ(群馬県):2009/06/13(土) 00:53:14.41 ID:I7CHhgaJ
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`ー-'=ー"ニ=ー~"`^" \\ / / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ }! |:::::::::::::|
「…まだ怖いんですか?」
「そっか…大丈夫、いい匂いしかしなかったよ」
(大変なのは、これからだって言ってたよ な…)
「…いいけど、狭いよ」
なかなか決まらない。
きょろきょろと辺りを見回していると、近くの茂みの前で、アリスが立ちつくしているのが見えた。
いや、違う…
いきなりぜんぶ読むわけにもいかないし今はこの辺りでやめておこう。
「あんなによく寝てんのに、真似していいの?」
「だって荒療治なんだもん。持てないなら無理に持たせるって」
「わかってるけど、花梨だって泣きそうな顔してる」
そうだ、だからこそ、ここまで問いつめている。
ほーんとにそれでいいんですかっ! どうなっても知りませんよ?
逆じゃあ、ないだろうか?
「…ぐすっ、おねぇちゃぁぁ〜ん」
夢のこと、七夕のこと、彼女には不可解な部分が多すぎる。
「そんな不思議そうな顔すんなよ。自分じゃけっこうバレバレだなって、いつも後悔してたんだ」
「くす、迷子になっちゃったんだ。でも、この辺りは入り組んでいるから仕方ないかもしれないね」
他の子が相手なら、照れちゃってなんにもできなくなるところなのに、この子が相手だと、なんだか…
1000なら俺の人生ここから上向く
「ご苦労さま。収穫あったほうだよね、たぶん」
別に何を考えるわけでもなく、僕は彼女の名前を呼んでいた。
「? ナナミですわ」
「…誘わせたんでしょう?」
庄一が不機嫌そうに引き止めた。
今までありがとう。
「できることなら、なんでも」
「透矢は、何やってるの?」
「今日、雪さんに案内してもらったばっかりだから…」
そのためなら、他のことなんてどうだっていいじゃないか…
それでも口を開こうとするマリアちゃんを、アリスは鋭い眼光で抑え込んでしまった。
「そういうこと。だから、怪と妖怪は違うのよ。予備知識もなしに、よく理解したじゃない」
さんざん荒らされた室内を調べてみた結果わかったのは、何も盗まれていないという事実だった。
「マリアと同じ…平和な人なんだ。ホントに、良く似た親子よ」
(落ちつけ…)
188 :
サクラソウ(千葉県):2009/06/13(土) 00:53:15.42 ID:Gr51GyEe
↓スクリプト爆撃
並んで、ベッドの上に腰掛ける。
「夢というのは、通常、記憶されないものですわ。それが常識から外れていればいるほどに」
「花梨がそうさせたんだ」
「那波ちゃんとは、お話できた?」
もういちど、空を見上げる。
「思いつきですわ。わたくしたちがいくら触れても、火傷なんてしませんものね」
「和泉が呼んでないか、牧野さんが遠慮してるか、どっちかじゃない?」
「ホント、ごめんね。なんだか今日は暴走しちゃったというか…」
「うん。宮代神社って言ったら、この辺りじゃ、けっこう有名なんだよ」
「あ、ぅ…そっか、そうだよね」
「ウチはおまけなんだよ、おまけ。まあ、後かたづけくらいは手伝うさ」
お母さんの側、乗り物の中、どこかのホテル?
「案内するわよ。他に案内するようなところもないし、同じに感じ悪いのなら外のほうがマシだもの」
「な、何か悪いことしたかな?」
「そういえば、和泉さんは、いらっしゃらないんですの?」
「ですけど…何か困っていらっしゃるように見えますよ。早くしませんと、検査に遅れてしまいます」
「どっかで聞いた話だなぁ」
それでも、つかんだ手の温もりと、笑顔だけは、確かに存在している。
てけてけ、がしっ、よじよじ…
208 :
アカシデ(関西地方):2009/06/13(土) 00:53:15.66 ID:JXwK/cCw
はや
「そう…そうかもね」
「和泉ちゃん…やめてよ」
実際、みんなには何も見えなかったに違いない。
「僕だって、二人にあんなにされて、恥ずかしかったよ…」
「あむ…ん…」
でも、こんな時間に書斎なんかで何をしているんだ?
「覚えていませんか? 透矢さんが退院された日にすれ違った車です」
「汚いって何が?」
動くものは、ない。
「服、脱ごうか」
「あ、うん、明後日だよ」
「優しいね、鈴蘭ちゃんは」
「…何してるの?」
「無理に何かやらせなくてもいい気がするなぁ」
「すみません。雪、お薬は駄目なんです。気分が悪くなってしまって」
「あ…うん…」
「手間を取らせたな」
「ありがとう。雪さんもね」
よじよじよじ、と当たり前のように背中をはい上がってくる鈴蘭ちゃん。
突き飛ばされる恰好になった牧野さんの口から、香を効かせたような声がもれた。
身体能力が異常に高いこと――
「うーん、でも、ホントに一人で大丈夫かなぁ」
「ふふ、どうされましたの」
「ねえ、知っていますか。雪ってひとつも同じ形をしていないんですよ」
「そ、そう…じゃあ頑張って」
「なつかしい…?」
「久しぶりっていうのは、僕が入院していたせい?」
背中に笑顔が伝わった。
もし、もっと前にこんな彼女を見せられていたなら、
「恩に着るわ。ありがと」
「おまえもだ。スイカスイカうるさいんだよ。和泉ちゃんが手配してくれたんだから、おとなしく待て」
「クラスの子に捕まってるんだ。すぐ来るよ」
恥ずかしそうに……うれしそうに?
「並列世界という概念をご存じですか?」
でも、彼女は僕の前で立ち止まった。
僕が、離れたかったのかもしれない。
「和泉がどうしたの?」
「僕への、言づけだって?」
「駄目だよ。ちゃんと答えて」
「ホントに変な記憶喪失。でも、それじゃあ、退院したら弓道もすぐにできるようになるのかなぁ」
どうやら、ズボンの下で大きくなったものが、彼女のお尻に当たっていたようだ。
真っ白な肌、赤い瞳。
「ホントにぃ? 走れるくらい?」
もっと、自信を持っていいんだよ、僕は花梨のこと好きだよ、と口で言ってしまうのは易い。
「人のサイフを盗んでおいて、そういうこと言いますか」
「もう、透矢ったら、って! 二人とも、何してんの!?」
「…ほにうるいなんだよ?」
「でもなぁ、そういうのって、気をつけていても危ないような気がするけど」
「ぁぁ…すみませ…んぅ…っ」
「…透矢、自分で言ったことには責任を持ちなさいよね」
「私は本とかテレビで見たから知ってる。ほかのやつのことなんて知らない」
彼女の部屋に通されたところで、さっそく本題に入った。
「食べて食べてー」
「っ…透矢さん…」
とにかく、手を離せばこの夢は終わる。
ただ弓を引けばいいっていうものじゃないだろうし…本当にここでいいのかどうかもわからない。
「アリス、仲直りしたばっかりなんだし。マリアちゃんも、ほら」
その日の夜の事だった、
「ん…それじゃあ、透矢さん」
「えーと、迷子っていうところ以外は、透矢くんとおんなじ」
ほほえみじゃない、笑顔で。
「良かった。本当だったんですね」
「海岸に誰もいないみたいだけど、工事でもしてるの?」
「僕、花梨の気持ちなんて、ぜんぜん気づいてあげられなくて」
「あ…デートだから、はりきって使いすぎちゃったかも…」
「そうですわね。その前に、できることなら用意していただきたいものがありますの。梓弓と涙石ですわ」
「牧野さんの事にしてもそうなんだ」
口、胸、お尻――本来、この行為の中心となるべき場所にはほとんど手をつけない奇妙な光景。
食堂には、誰もいなかった。
夢の中にいた。
吐息が、あえぎに変わる。
残ったカードに描かれたニヤけ面が腹立たしい――ババ抜きである。
「夢でしょ、怒らないわよ」
「胸はちっちゃいけど、将来有望だと思うわよ。双子の私が言うのもなんだけど」
お母さんの側、乗り物の中、どこかのホテル?
僕の、願望の産物だ。
白くかすんでいく視界の向こうに、
「明日、本番だよね」
光は、拡散して世界を包み込んだ。
(今日、あの布団で、雪さんと一緒に寝る のかなぁ…)
「僕だって、別に放っているわけじゃないよ」
誤魔化すように、花梨は大げさな仕草で上空を指さした。
観念したのか、花梨は素直に答えた。
「それでも、私には王子様だったよ」
「うん…用というか、ほら、試合の時から変な感じになっちゃって」
「はい、バンザイして」
空から、白いものが、ふわり、ふわり。
「そうさせてもらうよ…」
「マリアちゃんにも、すぐわかるさ」
なんにせよ、苦しむとか守るとか、あまり、いい話じゃない。
「まきの、ななみ」
勢いよく飛び出したものが、指先を濡らす。
花梨は席につくなり、机につっぷしてしまった。
そして、股間にあてがっていた指先で、くわえていたシーツをつかみ、それを口もとへ運ぶと、
小憎たらしいその表情が、とても愛すべきものに見えた。
制服を着た、雪さん。
「透矢の、お母さんだよ」
なんとも情けない返事になった。
「夢ですわ、透矢さん。覚めれば忘れてしまう夢」
わからない――
「エロってあんた、いっちょまえに嫉妬ですか。そういうことみたいだから、キミも少し気をつけなよ」
僕は、しっとり濡れた秘部に舌をさしこんだ。
「アリス、大丈夫? だいぶ疲れたみたいだけど」
腕の力が少しだけ、弱まったような気がした。
「しかし…なんだ…おまえもガキのお守りか」
「…もう、決めたことなの」
「山のように起こっているわ。気づかないか、目を逸らしているか…慣れてしまっているか」
「うん…わかったよ、和泉ちゃん」
言われてみれば、姿は何度か見かけているけど、声まで聞いたことは…
消えてしまいそうな僕に、優しく、居場所を与えてくれた。
“っずびーーー…”
「あー…あはは、ごめーん」
「……わかった」
「うん…今さらだし…ちょっと、できそうにないから」
「僕こそ、せっかく誘ってもらったのに、牧野さんばっかり見てて」
「すけてる感じで、なんか…」
「馬鹿だな…雪さんはずっと僕の側にいてくれていいんだよ。いてくれなきゃ、困る」
「はい。だから、今度は…」
「ひぃっ…ぁ…ぃぁぁ…」
「デートか…うん、いいよ。行こう」
「うん。誰にも遠慮しなくていい」
「どちらも、事故の当日に持っていらしたものです。何かを思い出すきっかけになれば…」
「私たちは霊感が強い。それがどういうことかっていうと、自我が薄いってことなのよ」
(落ちつけ)
「そっか、そんなことが」
握った手が落ちつきなく揺れる。
それでも…
気がつけば、僕の頭の中では、売られていく子ウシの曲が鳴っている。
羞恥という理性の色が消え、徐々に快楽の色に染まっていく。
戻ってくる頃に治っているのを期待するわ――なんて言っていたけど。
それからすぐ、優しげな目で僕を見つめ返してきた。
「雪さんもママ?」
「っ、っぅ! った、いた…ぁ、っぁ」
「あー、なんで朝から走んないといけないわけ?」
ずっと一緒だった人間が、ある日、消えてしまう。
「まだまだですよ。あの量ですからね、少しずつ片づけていこうと思います」
僕は、空いている手を、優しく愛撫を続ける彼女の手に重ね、撫で返した。
雪さんの目から、いっぺんに涙があふれ出す。
「ぃぅっ…」
「んっ…ぷ…」
立場がどう、考え方がどう、年齢がどう性別がどう、人種がどう――
「無駄って、僕はてっきり、雪さんも来るものだと思ってたよ」
「っ…くすくす」
この夢が、僕にとってどれだけ意味のあるものなのかはわからないけど、
「どうした、浮かない顔して」
354 :
プリムラ(千葉県):2009/06/13(土) 00:53:17.52 ID:KsAwcDKu
うおおおおおおおおおおお
「ええ。そうそう、これを見ていただけますか?」
「ぼうっとして、どうしたの?」
そう言って、アリスは首をしめるようにしながら、強引にマリアちゃんの体を引いた。
やっぱり、僕は、この生活に満足してしまっているのかもしれない。
空気すら人を拒絶しているのか、むっと立ちこめる草いきれに、むせかえりそうになる。
「んぅぅ」
「っやぁぁぁ〜! 花梨ちゃん、ダメダメダメぇ〜〜〜っ」
「いえ。あのぅ…」
「ふふ…人のお祝いよりも、ご自分の心配が先ですわね」
「座椅子じゃないんだから」
「防空壕…ああ、そういうことか」
確かに、メガネを外して髪を下ろした和泉ちゃんは、可愛いというよりきれいだ。
子供の頃は、こんなふうだったのかもしれない。
「それじゃあ、透矢くんは、私と結婚してくれるの?」
「今この瞬間、見聞きし、感じている夢。それが現実なんだと思いますわ」
「あー、いや、通りかかったから」
彼女の体に触れたい気持ちはあった。
「花梨ちゃん、もう少し背筋を伸ばして」
「い、和泉ちゃん、大丈夫?」
「本当にね。それにしても…キミ、また夢見たの?」
「卑怯者?」
「ゆ、雪さん、やっぱり休んだほうがいいんじゃないかなぁ」
それでも、ただ暑いばかりの中を歩くのとは天と地ほどの差があった。
「…頭を、撫でて下さい」
ふたりの笑顔には、たくさん助けられているから。
「待つ」
最後の、ひとつ。
「まだ整理してるんだね」
だけど、道場の練習とは違う。
「…ずいぶん、あいまいなんだな」
「わかった。よろしく、庄一」
「怖いのか?」
花梨に言われるがまま、トンと背中を押す。
木陰の涼しさ、木の匂い――なんだか、とても心地良い。
「牧野さん、体調のほうは大丈夫?」
僕は鈴蘭ちゃんの手を取って、道なりに進んだ。
そんな想いをこめて、僕は、動いた。
このまま続けられたら、また、すぐに達してしまう。
僕の場合、勉強だけなら雪さんに教えてもらうっていう手もあるんだけど…
「や、約束だかなんだか知らないけどね、透矢は私の…」
「ふふ…雪なんかが相手でも、気になるものですか?」
「み、水着、似合って良かったなぁ…って思っただけぇ…」
「んー、いや、やっぱり俺の勘違いかもしれないな。俺は牧野が来るもんだと思いこんでたしさ」
どこか、ぞっとした気持ちの僕とは反対に、牧野さんは楽しそうな顔をした。
時間はあるし、ここまで来たら後に引くつもりもない。
「この子はまた偉そうに。それだけ言うなら、その精霊流しとやらについて、ちゃんと説明してよ」
「ああ、お姉さんの…」
「…行こうか」
「まさかね…」
過去の自分の気持ちは関係ない、今の僕は、本当にそうなんだと思う。
「あーあ、どうしてキミに言えて、私には言えなかったんだろう。悔しいなぁ」
今度は、こういう素直さならいいな、なんて、節操のないことを考えてしまった。
「新城和泉さん? えっと、今度はどう呼んだらいいのかな」
正直に言ったって言うことなんか聞かないに決まってるし、無駄な不安を与えることにしかならない。
「おねーちゃん…」
「んじゃ、俺もそろそろ済ませてくるわ」
「嘘つきの私が言うことでも、お人好しのあなたなら、ひょっとして信じてくれるかな、と思って」
花梨のことがそんなにショックだった?
「ありがとう、雪さん」
「えー、ちょっとぉ…」
花梨は、ケガした足を引きずりながらも和泉ちゃんに駆け寄っていく。
花火が上がる。
「可愛いのもあるけど、他にもたくさん、好きなところがあるから」
「もっかい同じことしても、いい?」
「それを喜んでるって言うんでしょうが!もーっ、人のおもらし見て喜ぶなんて信じらんない」
「痛い、よね」
手を止めると、花梨はごていねいに、不思議そうな顔で首をかしげてみせた。
健康に気をつけて…透矢くんは透矢くんのままだから、記憶喪失になんか負けないでください。
「…それが魔女の力? だとしたら僕も魔女になっちゃうけど」
すべてを無くした自分。
変えてたかもしれない。
なぜか、そのまま固まってしまった。
不安げな声が首筋をなでた。
「アリス、あの奥には、やっぱり人体実験の…」
言いながら、雪さんが入り口わきの、こじんまりとした戸をくぐる。
「ごめん。やっぱり駄目だよ…何かあったら困るから。これは、おまえの体じゃないだろう?」
どっと疲れて肩を落とすと、庄一が近づいてきた。
庄一あたりなら知っているかもしれないし、あとで聞いてみようか…。
鈴蘭ちゃんは、自分の髪につけていたカエルのヘアピンを、少女の髪に飾った。
「今は、そっとしておいてあげたいんだ。優しくされても、辛いだけだろうし」
「男同士の話。ちょい、外出ようや」
誰にもそれを否定する権利なんてない。
何か、そのふたつであることに意味があるっていうのか?
あなたは…そうだ、
どうやら、僕のことを待ってくれているらしい。
「花梨ちゃん、怒るとよけい暑くなっちゃうよ」
「はい…おねがいします…」
「はは、わかってる」
「こらこら、駄目だよ」
「っ…へっくち…」
「いえ…強い放射線に当たり続けると、皮膚が焼けただれたようになると言いますし…」
「ケンカでもしたの?」
「はいはい、マリアちゃん、ばんざーい」
「っぃぁ! うれし、っひ…っぁ、ぁぁ」
「気にしなくていいよ。それより急がなくちゃ」
ないけど、大いに興味をそそる内容だった…あとで読んでみよう。
彼女は、難しい顔でふさぎこんでしまった。
それでも、差し込んだ指の根本を締めつける力は、衰える気配がない。
しかし、こう快晴が続くと、いい加減に水不足の騒ぎでも出そうなものだけど、大丈夫なのか?
「…だから、私まで甘えたくなっちゃうんじゃない」
「ママのことなら大丈夫よ。あなたのことは、この私が許してるんだもん…安心して任せられるって」
「…アリス、本当にやるわけ?」
牧野那波――
「透矢さん、早くしないと時間がなくなってしまいますよ?」
「ぁ…はぁ…旦那さま…じらさないでくださいな…」
「話したってお互いにいいことないわよ。ね、透矢」
「和泉を見習う? ホントにいいの?」
「おねーちゃんっ!」
「そうだね、雪さんが苦しい思いをしたのだけ抜かせば、そうかもしれない。僕もいろいろわかったから」
「居場所?」
牧野さんは笑顔でうなずき、短冊を差しだしてきた。
「あの人が? 勘っていうやつ?」
「…水月、ですか」
「よろしく。あの、ところで、さっきの女の子は大丈夫なの?」
ぐちゃぐちゃ――湿った音と、ショーツのシミは、手を動かすたびに、どんどん広がっていく。
「別れることなんてないよ。僕も和泉ちゃんがいてくれたほうがうれしいし…考え直そう?」
「馬鹿で悪かったですねー。ふん、きのうその馬鹿に、べったりだったのはどこの誰ですか」
彼女は何も言わず、代わりに困ったような視線を僕に返した。
そう、やる気にはなった。
『また、後ほど』
「いいも悪いも…マリアちゃん、無理してるんじゃ…」
「はは。ねえ、ところで、気分はどんな感じ?」
僕には母さんなんていない。
「メイドさんは、違うの?」
提案者であるはずのマリアちゃんが、不思議そうな顔で問い返す。
「和泉、安心して。補習中、透矢の面倒は私が見るから」
「ぁ…も…申しわけ…ありません」
「あの、取り込み中に悪いんだけど…」
僕はそれを『気持ちいい』と解釈させてもらうことにした。
「俺なぁ、おまえの代わりに大将になっただろ?」
あれほどはっきりと、忠告されていたのに…
『巻き込まないで済んで良かった。ねえ、私たちのこと友達だと思うなら…せめて忘れないでよね』
元来た道を引き返した。
「ねえ、花梨?」
ふたりの鼓動が重なっていく。
「それくらい顔を見ればわかるよ」
「あのねぇ、せっかく朝ご飯作ってあげたんだから…あったかいうちに食べてよ」
「…どっちも」
誰の期待にも応えられなかった、なんにもできなかった意気地なしだけど、
「ひどいなぁ、ぱっと見だけしか知らないくせに」
「…たまーにひどいのな、おまえ」
496 :
ナニワズ(香川県):2009/06/13(土) 00:53:19.62 ID:3SDOcfgL
こい!こいよおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!
そういえば、ずいぶん長いこと忘れてたけど、大丈夫なのか?
涼しい顔で、行ってしまった。
「うるさい、うしー」
雪さんが背中に顔を寄せる。
言いながら、もう、そういうことになってしまったのか、雪さんは僕の手をとってなで始めた。
雪さんの匂いなんて意識したせいか、妙に目が冴えて眠れない。
牧野さんは、いつも透矢さんって、呼んでくれるじゃないか。
「ごめん、雪さん。先に行っててくれないかな?」
彼女は意外にすんなりと引き下がってくれた。
くぐもった『声にならない声』をあげ、彼女が体を硬直させる。
「みんな、見る目がないんだよ」
「でしたら、これは?」
和泉ちゃんが、立ち上がった。
「隠しても無駄だもの。この子って言い出すと聞かないし、こっちも時間がないから」
「まあ、牧野については、嫌でも会うことになる。そのとき自分の目で確かめるといいさ」
何を言っているのやら。
「本当?」
「嘘だ」
「神隠しとかな」
「お父様ではないでしょうか?」
「はは、ありがとう。でも、その子から見たら違って見えるかもしれないよ?」
別に庄一の頼みを聞く気もないけど、僕はもうひとふんばりしてみることにした。
起こす必要もないし、ひとまず、僕も木陰にお邪魔させてもらうことにした。
「借りたものを返しただけ。さっ、用が済んだら帰って帰って」
「…和泉って、前世は亀だよね」
「んー、そっか…」
「あの、まあ…要するに遊んでほしいっていうことなんだけど」
「有名なんだ。でも、その神様がどうして宮代神社はともかく、海になんか出てくるわけ?」
「記憶はどうなるの? 僕たちの生活には確かに時間が存在している」
「何かな?」
「透矢さーん、こんばんは」
一度達した際の余韻もあってか、花梨はすっかり出来上がっているようだ。
「また?」
「二人きりの世界も、素敵ですよね」
「…そりゃあ、したいけどさ」
「思い出したっていうのとは、少し違うんだけど」
和泉ちゃんがうなずいたのを見て、庄一に事の次第を伝えた。
今ではない、いつか。
体を落とし、ピンと立った乳首にかじりつく。
「クラスの子に捕まってるんだ。すぐ来るよ」
ふと、思いついた。
「すみません、雪のせいですね」
「力抜いて。余計なことも考えない。私を信じて。治るってイメージして」
僕は極力、彼女に痛みを与えないようにしながら、それでも動いた。
意識して笑ってみる。
「だ、大丈夫…だよ?」
「そうなんだ…」
「七月七日七時、宮代神社に集合なんだけど、宮代神社の場所、わかる?」
世の中そんなに甘くないってわけだ。
「僕も…っ…」
これじゃ、眠れないよ、雪さん…
「…僕のほうが、弓道が上手いからっていうの? だったら…」
「怒ってないし、謝ってくれとも言いませんけどー」
「ごめんなさい。私のせいで、危ない目にあわせちゃって」
「夢だから。那波は今ここにいる」
「あのー、和泉ちゃん、その本なら俺も読んだんだけど」
「ぅぅ…わかりましたぁ…」
牧野さんのお父さんは、すでに引き上げた。
「っ、次言ったら、本気で殺すからね!」
「雪は、いいです。人混みは苦手なので」
彼女は、自分でもわからない不安に怯えている。
だけど、そんな切ない想いが眠るという海岸も、今は開発の対象になっている。
「僕…?」
「あむ…っん…」
「那波ちゃぁぁぁ〜ん」
「雪さん、目をつぶらなきゃ」
「駄目ですよ、目の前に女の子がいる時に他の方のことを考えるなんて」
「んー、じゃあ一緒に寝ようか」
「そんなわけないじゃないか。ところで雪さん、その帽子は?」
「でも…こればっかりは、二人一緒にっていうわけにもいかないよ?」
僕は、そんな女性の、一挙一動に心を奪われていた。
二人が口をそろえて誰も見ていないって言うんだから、仕方がない。
都合、百回ほどの挫折を味わって、練習を終えた。
「霊感が強いじゃないですか。だから、取り憑かれたり…とにかく、影響されやすいんですよ」
「…だって」
アリスも、マリアちゃんの局部に手を伸ばし、ぎこちない手つきで続く。
そこに迷い込んだ者は、神隠しに遭ったと言われる。
「雪さん、ごめんね」
「殺すって…」
いつかどこかの僕が、覚えている。
「お父様…」
事情を説明すると、花梨はけげんな顔をして、
「そういうことか。ま、頑張ってくれ…おやすみ」
途端に、幸せな気持ちになってしまう。
「ご、ごめんね、庄一くん」
「わかってる。お父さんにも誰に聞かれたとかは言ってないから」
「でも、それがなくちゃ…」
「ホントだ。でも、病み上がりだから、今日は無理しないほうがいいよ」
585 :
チドリソウ(不明なsoftbank):2009/06/13(土) 00:53:20.87 ID:OSs0EVcn
あ
「違うんだ? でも、良かったのかなー、庄一を行かせちゃって」
「大丈夫?」
「ありがとうございました。そろそろ参りましょうか」
「制服着てるの見たから。あそこ、一般の人にも開放されてるんでしょう?」
「無理もありませんよ。でしたら、そう、事故にあわれたのは覚えていますか?」
彼女は、もう――
そして、そんな状態で迎えた日、いよいよ大会当日――
“ズッ、ズッ”
「そうか、見てないか…使えねーな」
「ぅぅ、いいもん、一センチくらい」
定期入れらしい所に、古ぼけた風景写真が差し込まれていた。
「あら…?」
雪さんは僕の制止も聞かずに、さっさと部屋を出て行ってしまった。
言い伝えによると、アレは天より降りて来たという。
「ちょっと、ホントに大丈夫?」
「熱烈な歓迎ありがとう…」
「マリア、よけいなこと言うんじゃないわよ」
「そう…。はは、気のせいだよね…」
と、雪さん。
話が、いい方向に流れてきた。
「悪かったね」
「ななみひゃん? みひぇはいほ」
ぼんやりした緑色の光は、僕らの呼吸に合わせるように、一つ浮かんでは一つ消えて、
波間を漂う光の帯のように、すっ、と僕の中に入り込んできた、あったかいもの。
そう、僕にだけ聞こえるような小声で、釘をさしてきた。
思わせぶりに、憂いを含んだ顔で言う…なんだろう?
「庄一はそんなことしないってば」
唇をかみしめ、何かに耐えるように構えを保っているけど、無理をしているのは明らかだった。
「消えてしまいますもの」
牧野さんはわずかにうつむき、すねた子供みたいに、つま先で水を蹴った。
「…透矢、さん」
しかも、悪い気分じゃなかった。
「ぅぅー…」
「さようなら」
僕は、雪さんを起こさないように気をつけながら、台所をあさった。
「じゃあ、僕も一緒に行く」
鈴蘭ちゃんは笑顔で海の底に沈んでいった。
本能的な何かが、理性と知性をねじふせ意識を支配した。
「この時期に土葬なんかして…いま掘り返してみなよ。アリスの頭でわからないわけないだろう?」
小さな体をもじもじ…。
気持ち良かったのかもしれない。
それだけしか言わなかった。
「ていうか、自主参加の奴が、一度だけしか参加しないって、不自然だろ…」
僕と違ってなつかれているし、仕方のない事だろう。
「っん…もっと…大丈夫ですから…」
「結果が出たらね。うまくいったら、和泉が謝るんだよ?」
と、絡んだ腕を見つめながら言う。
「それは…できるなら、それが一番だと思うけど」
大丈夫、だよ――
「残念ながらな」
「でも、男の子って、そういう本とか見てるんでしょ。女の子よりはいろいろ知ってると思うけど」
ほめられて、よっぽどうれしかったのか雪さんは鼻歌まじりにお茶を注ぎ始めた。
雪さんが女の子のために使った、おとぎの国の入り口を開く魔法。
「おねーちゃんっ」
でも、和泉ちゃんは大まじめな表情をくずさない。
「おまえら…なんで同じ『とってつけたような返事』なのに、透矢と俺とで対応が違うわけ」
ワンピース越しの彼女の胸に、ほとんどふくらみは感じられなかった。
「雪さん、別にそういうことじゃないよ」
「本当に嫌な時は、言って」
「いいえ。透矢さんは、那波のことを殺したいと思っていますの?」
「ふふ、那波ですの?」
「でも、人の世界で生まれる」
「何がだよ。和泉ちゃん、そんなわけだから」
「おまえ、息子なんだし、課題にもなってることなんだから読めよ…」
「庄一?」
「それでも、お願い」
「うん。でも、手紙のほうがいいかなぁと思って。前もこんな感じだったし」
なんとも情けない返事になった。
「ううん。ひょっとして、マリアちゃん、アリスっていう子を知らない?」
「聖母は、キミのほうだったんだ」
教室についたのは、ホームルーム開始の鐘が鳴り終える、ほんの一拍前だった。
そして、そのために自分が傷つくことは一切いとわない。
「もう、言ってるそばから会うなんて」
「ごめんなさい…人間のせいで、苦しい思いをさせて、ごめんなさい」
「う……、透矢、私のほうは、別に用事とかじゃないんだから」
今日の無縁墓地の件と、少なからず関係がありそうだけど…。
彼女から見たあの夢は、いったいどういうものだったんだろう。
「つき合うって言われても…ね、花梨?」
「あの方が、透矢さんの夢に出ていらしたという…」
なんにせよ、無駄な時間を浪費せずに済んだ。
「はや? はややゃゃゃ…」
わけもなくこみ上げてくるものを感じ、二人から顔をそむける。
「言いながら足を上げるな…俺じゃなきゃ男として生きていけなくなるところだったぜ」
「風船に、名前…」
夢や幻は、それでもいい。
「いいものじゃ、ないですよね」
出会ったばかりの、ただ、わけがわからないという雰囲気の那波。
ふたりは、何かが、おかしい。
「じゃあ、練習しよっか」
あれからだ…彼女との距離を置くようになったのは。
「それなら、どんなに良かったか」
「花梨、大丈夫?」
「い、和泉ちゃん…また間違えたの?」
「もう、言ってくれれば…」
「何度か、そんな夢を見ましたもの」
死んでしまった今では、遅いのかもしれないけど。
「とっても痛かったですよ。責任、取ってくださいね?」
「本気だよ」
「…いいよ…ごめん、透矢、雪」
そこまできたら、和泉ちゃんのことまで思い出したって良さそうなものだ。
「おは…よう?」
「無理だよ。和泉ちゃんがいるし…」
夢で見た小川が、そのまま――
僕を想って、あんなふうになってしまう雪さんが、今は愛おしかった。
波音のせいだろうか。
そして、僕は再びここを訪れた。
つまり、一時的な記憶喪失だ。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
波間にゆれる月みたいに不確かな、その世界の中で出会った僕たち。
「でもね、今は大丈夫。透矢くんが助けてくれたから」
「たとえば、お月様はひとつしかありませんわね」
「っ…ぁん…冷たいですわ」
「からかっても無駄だよ。僕だって覚えてないんだから」
雪さんが読む本じゃない。
「あ…用がないと、呼んじゃ駄目かな…」
それを口の中でころがしながら、僕は、また閉じようとする割れ目を、指で押し開いた。
「あ、なに?」
「日射病、なのかな?」
キツネの死体が腐敗から守られていたのは、ひょっとしたら、その影響なのかもしれない。
「ぁ…ぅぅ…ぜんぶ、本当です」
「宮代さんが、舞に失敗してしまって、泣き崩れて…その後…彼女は目覚めないんですの」
言われてみれば、姿は何度か見かけているけど、声まで聞いたことは…
いつかどこかで見なかったか、こんな風景を。
時の流れに消えていく、大切なそれをつなぎ止めておきたくて、僕らは思い出を刻む。
にこーっ、と笑う彼女を止める力が、僕にはなかった。
なのに…どうしてか、胸が高鳴り足は自然と動く。
「ていうか、自主参加の奴が、一度だけしか参加しないって、不自然だろ…」
なにやら、すごいことになった。
隙間がひろがり、舌に、熱い液体が絡みつく。
「怒らない?」
「雪さんって、どんな本を読むの?」
静寂。
夢って?――つい、反復してしまう。
「牧野さん、震えて…」
「だってこれ、精霊流しじゃない」
「なんですか、透矢さん?」
僕には、もう引けない。
「あのさ、もう…」
何か異常なことが起こっている。
「和泉ちゃん、俺がきれいだって言ってもそんな反応してくれたことないのに…」
『本当に?』
恐ろしかった…
「私がおだやかな事なんて、ほとんどないじゃない」
それでも、やっぱり何か気になることがあるんだろう。
彼女も、もうすぐなんだ――
「来るかなぁ…」
「…は…ぃ」
「じゃなくて、こっちが良すぎただけ」
「いくらお人好しって言っても、信じてくれるのかな…」
「僕は、もっとはしたないところ、見てみたいな」
手を離す。
「ふーん。でもいいな。今日は暑いし、僕もひと泳ぎしたいよ」
僕はその手を下へ、彼女のスカートの中へと潜り込ませた。
その、完璧な美しさに、僕は失礼だとわかっていながらも、彼女から目を離すことができなかった。
「んー、とりあえず足のこととか」
「ううん、マリアちゃんと遊びに…」
「む…っ…透矢く…ふぅっ…んぅぅ」
まさか、花梨に謝るのが、嫌だっていうことなのか?
そして僕は、あなたと手を取り現実に生きよう。
「だって、僕の知らないところで、ぜんぶ決まってる…」
「一人よりはマシだよ、たぶん」
「ん、なんだって?」
「こっちは、私たちでやっておくから」
「雪さん、聞こえる?」
鈴蘭ちゃん相手だと、マリアちゃんも、お姉さんになるんだなぁ、と当たり前の事に感心。
「はは…どうだろう」
「いいよ…それが普通なんだもん。待ち合わせがあるのに、ごめんね」
「…………してないよ」
ポッポーッ、という音でも聞こえてきそうな勢いで、全身が熱を持っていくのがわかった。
二人はもう坂の上にいた。
「やってやってやってやってやってー!」
「子供の頃の話でしょう?」
「同じような夢?」
「寝ないと、治らないよ」
「ぁむ…っ…」
「大丈夫だよ、透矢くん。退院して元の生活に戻れば、きっと少しずつ思い出せるから」
庄一の話の通りだ。
「大丈夫ですから。あまりお待たせしては失礼ですよ」
「おなかは、好き?」
「ごめん。でも、呪いって…」
「マリアちゃんは、なんて言ってるの?」
「和泉ちゃんは、いつも笑顔だったじゃないか」
「那波には…そんなことありますの」
「そういえば、今回は同じ夢を見なかったんだね」
「他に誰の心配をして、こんなところに来るのさ。それより、病院を抜け出してまで、どうしたの?」
「透矢がエロ話なんか始めるからー」
「そんなの、雪が良くありません」
「それにしても『逃げるわけにいかない』なんて、人聞きが悪いなぁ」
「そう。体調、良くなったの?」
べーっと舌を出したかと思うと、にこにこ。
「? えっと、だから体調が悪いし…」
どうしてだ。
「お医者様から、もうお目覚めにならないかもしれないと。ですから、雪は」
「庄一くんって、別にお寝坊しているわけでもないのに遅刻するんだよね」
「…ああ、花梨とベタベタしてたって、例の記憶か」
「ちょっとマリア、なんのつもり?」
花梨の温もりに包まれて、震えが、少しずつ収まっていく。
「あなたたち、良くこんなの相手にして、正気でいられるわね」
「あ…正直、興味本位で聞いてるだけだから、無理に答える必要はないよ」
「ゆ、雪さん!」
「アルバムを、見ていたんです」
「うん。なんだか、ホタルを見てるような感じで――」
「そうですか」
『大好き…』
「男なのは確かだと思うけど」
ふたりで縁側に腰掛ける。
「なんか…変な感じ」
「ホントにいいの? 私に気をつかってるなら、別に…」
794 :
オウレン(群馬県):2009/06/13(土) 00:53:23.66 ID:LrcFvG25
スクリプトで言論弾圧とかチョンくせー運営だな。キムチ悪いわ
「まあ、この調子だと、テスト前には退院できちゃいそうだからね」
弓道が好きだから、あんなに熱心に教えてくれるんだろうか。
黒い、空気の壁を切り裂いて、何かから逃げまどうように。
「はい。透矢さんの、とても…」
僕は、その入り口と、たくさんの液でベタベタになった下の穴をも塞ぐように、開いた唇を押しつけた。
僕の動きに反応して、彼女の腸内がざわめく。
「あ、ああ…いいけど」
今さらながらに、二人きりっていうのが意識された。
鈴蘭ちゃんの両手にはミカン飴と綿菓子庄一の両手にはタコ焼きとクレープが握られている。
しかし、どうにも窮屈だ。
「なんてことするのぉ…」
「冗談。何も言わないのが正解に決まってるんだから。じゃあね」
こうして視線を集めるのにも慣れたし、いっそ落ち着いてしまう。
なんだろう、この感覚。
感じてはいる…あとはもう、実際に確かめてみるしかないだろう。
「んー、まあ、ちょっと…」
僕は、胸の谷間に顔をうずめると、双方の乳房に軽く歯を立て、痕を刻んだ。
「ぁ…」
立ち上がろうとした瞬間、転びかかった和泉ちゃんを、僕は危ういところで抱きとめた。
「んー、飲んでるかも」
でも、僕の好きってなんなんだろう。
「大人にして」
彼女にメイドという名の居場所を与えること。
雪さんは、すねた子供みたいに口をすぼめ、顔を背けた。
「っ…はぁ…」
キツネの死体が腐敗から守られていたのは、ひょっとしたら、その影響なのかもしれない。
しどろもどろになった僕を救ってくれたのは、お客を迎えに出た雪さんだった。
「ええと、新城ともうしますけど…」
でも、いちばん話が無駄なく済みそうなので、あえて彼女に尋ねた。
「…そこまで考えてくれてたんだ」
「だから聞きたいんだ。今の僕には、雪さんしかいないから」
「お互いさまじゃないか。それじゃあ、外すよ?」
「ほらぁ、和泉がさわぐから、やり損ねたじゃない」
女の子の中ではダントツの腕前だ。
「帯…?」
「それを、透矢さんが変えてくださったんですよ」
「…責任って言われたって、目が覚めたら背負わされていただけだ」
「人聞き悪いなぁ。困らせるって、別にそんな。ねえ、透矢?」
「ごめんね。うれしくて調子に乗っちゃったかも」
「明日は試合だしさ、のんびりできればいいんじゃないかな。うちに来る?」
彼女は股間をおおう布の上――ちょうど縫い目のある辺り――まで手を導き、解放した。
「はいはい…」
「あー、透矢っ、あぶな…!」
無駄無駄無駄
次の未来に、どんな夢をつないでいけるだろう。
┌┐ / //
[二 ] __ 〔/ /
| |/,ー-、ヽ /
/ / _,,| | ./
レ1 | / o └、 ∠/
.|__| ヽ_/^ ,/
__ / <⌒/ヽ-、 ___
[二二_ ] / /<_/____/
// {..
/ ∠__  ̄フ..
∠___ / /
_ / / \
/ o ヽ/ / /
ヽ__ / \
「そうそう。それに、雪って写真とか嫌いじゃない。思い出せなくても仕方ないと思うよ」
「何それ? ひょっとして、気でもつかってくれてるの?」
えい
「えっ、えっ…透矢くん…雪ちゃんとそんな事になってるの?」
僕の頭を撫でてくれる人、雪さん。
この調子なんだから、参る。
「昨晩のことです。楽しかったですわね」
「ええ。ずいぶん元気がありませんよ。違うんですか?」
「透矢からで、いいよ…」
まだ大丈夫だ。
空が、近い。
雪さんは糸の切れた人形のように、ぐったりと力なく体を横たえた。
僕たちは普通の友達なんかじゃない。
そう言って優しく撫でてあげると、少しくすぐったそうな顔をした。
「そ、そうなんだ…」
856 :
クリサンセコム・ムルチコレ(dion軍):2009/06/13(土) 00:53:24.16 ID:JVQFglQi
きたー
「おねーちゃん! 透矢さん、次はきっと勝てますから、頑張りましょうね」
パトロールという言葉から、相手が警官であることがわかる。
「僕たちの見るあの夢は…」
「…絶対に外に出すなって言ったじゃないか」
「今度は、舐めてあげる、っていうわけにいかないからなぁ…」
花梨ちゃんが、泣きそうな顔をした。
察してくれたらしい。
「っ…っく」
「そのかわり、ここにいるよ」
「いいけど、何?」
子供の頃の記憶がそうさせているのか、それとも、遺伝子に眠る、はるかな、過去の、記憶…
「ボクとは遊びだったのねー」
「僕で、いいのかな?」
「透矢さん、早く来てくださいな」
「もう…また練習したほうが良いかもしれませんね」
「花梨はそれで大丈夫?」
「っ」
あの子は、月までたどり着くことができただろうか?
確か、去年もなんだかんだ言ってあまり働かなかった。
「花梨さぁ」
「覚えてはいないけど…牧野さんの夢を見たんだ」
「ご先祖様が帰ってくる日だよね」
決まった時間に起きて、適当に課題を済ませ、雪さんとお茶を飲み、寝る――そんな平和な日常。
話が唐突すぎて、まともに返事ができなかった。
「な、なんか急に危ない話になったね」
「そうか、雪さんがいない間を狙って、空き巣が…」
わけもわからず引いているだけの、恐ろしい弓道のことなんかより、
「僕に、和泉ちゃんの代わりなんてできないと思うけどなぁ」
「期待しています……あら、ちょっと失礼しますね」
「それで『つながる』か」
「そう…続き、いくよ?」
「い、和泉ちゃん…また間違えたの?」
だいたい、僕と接点のある人間なら、事故のことだって知っているはずだ。
どうせ記憶を無くすなら、いっそ、赤ん坊にでもなってしまえば良かったのに。
彼女はときどき、野生の動物みたいにどん欲な目をして、僕を見る。
「透矢さん…雪…っ…ゆきぃ…」
「透矢と俺ね。いやーな予感」
「また、会えるのかな?」
「大変だなぁ。じゃあ、和泉ちゃんは仕方ないとして…」
「海の中って、そんなにきれいなものなんですか?」
「…ぅ…っく…」
898 :
マツバウンラン(福岡県):2009/06/13(土) 00:53:26.38 ID:Mz0pu+4G
ゑゑゑワロタ
「いいえ…とても、うれしいですわ」
典型的な高熱による症状だ。
名前を呼び、ほほを撫でる。
「そういう時は、声をおかけになってください。うんと優しくしてさしあげますから」
担任へのあいさつを済ませ、緊張しながら教室に入ると、和泉ちゃんのにこにこ笑顔に迎えられた。
このままいたって、ただケンカが続くだけだ。
「透矢ちゃーん」
「大丈夫だと思うわよ。知性って、どうしてもにじみ出るものだから…ぁ〜ぁ」
「ほら、花梨にできることだぜ」
「雪さん、ご両親のことは、ぜんぜん覚えていないんだっけ?」
「あの、そのほうが…」
(ごめん、また今度)
弓道場には、たくさんの部員が揃っていた。
「? だって、私、ずーっと透矢くんのほうを見てたから〜…ぁぁぁ!?」
「んむぅ…」
犯罪スレだ、突入!!
__
|| /⌒\_ \ヽ
|| |_@|__』_]_______ ̄ ̄―‐‐
|| (´∀` )∂)\―――――‐‐‐‐‐―‐‐‐‐‐
|| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄―――――__________――__________
⊂ | ⊂二二⊃ |―――――‐‐ ――――‐‐
| 。 。 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 。 。 |_________――――________――――
| 。 。 |――――――――‐‐‐‐――――‐‐‐‐
|_____|―――|――――_______
ダダダッ
「私より、和泉が」
「実際にあった事だからよ」
そして、ふわふわした足取りで近づいてきたと思うと、僕の耳元に顔を寄せ、
「透矢さん、和泉さんがみえられていますけど…」
意を決したようにうなずいた。
「僕は覚えてないけど…だよね?」
「いいよ。僕は、うれしかったんだ」
「だーって、私だけ残るの嫌だもん」
広大な敷地に、洋館を思わせるような、過剰に巨大で豪奢な建物。
924 :
ヤマエンゴサク(東京都):2009/06/13(土) 00:53:26.73 ID:y4LMA6Jx
こいつ ∩_
最高にアホ ((( 丶
〈⊃ )
∩___∩ | |
|ノ 丶| |
/ ● ● | /
| (_●_)ミ/
彡、 |∪| /
`/ __丶ノ /
(___) /
∩___∩
|ノ 丶
/ ● ●|
| (_●_)ミ
彡、 |∪| / \
`/ __丶ノ/\ 丶
(___) / | |
| |
こいつも f |
最高にアホ ||)))
U ̄
こくこく。
「は、ははは…」
「今日、病院に行ってきた。入院していた時に、いくつか検査をしてね」
伝わるはずもない吐息に、僕は、身震いした。
「すごい本の数でしょう? 最新の小説とかも入荷するから、読みたい本があったら探してみるといいよ」
「花梨も気にしてたけど、彼女は、彼女なりに変わろうとしているだけだよ」
「…は、はぁ」
「あぅ…」
「透矢、あなた…何者?」
「そういう病気なんだって。夢を見たくなる病気」
「それでも、なんにも言わないで消えるのは反則だよ」
なんだか、懐かしかった。
彼女の待つ場所に向かおう。
おかしいことなんて、何もありはしないのに、笑いしか出て来なかった。
彼女が何かを突き立てるような仕草を見せると、再び新たな傷が開く。
「ぁん…落ちてしまいますよ」
「透矢ちゃーん…おなか…」
ありがとうって言ってくれたんだから喜ばなきゃ、笑ってあげなきゃ。
「はは…まあ、気をつけておいてよ。この前の感じだと、ホント、急に戻るみたいだから」
きのう、あんな別れ方をしたせいで、気まずい。
柔らかさも弾力も段違いで…それに、何よりあったかい。
「透矢くんも、ごめんね」
和泉ちゃんからお見舞いにもらった、おいしいと評判のクッキーよりもおいしい。
「…透矢さん」
ひとりで逃げ出して…
「というわけで、ほら」
「ああ…ちょっと嫌なことがあってね」
「知性ねぇ…」
夏休みになったらみんなで探す、なんて話もしてはいるけど…。
「それにしても、おふたりとも、ちょうど良い所に来てくださいましたね」
課題のこともあるし、何より、父さんが何を書いているのかに興味があった。
「本当ですの」
「ええとね、だからそのぅ、ちょっと急ぎすぎちゃった」
少なくとも、笑顔で祝福はできないような気がした。
959 :
キンギョソウ(埼玉県):2009/06/13(土) 00:53:27.08 ID:fDEkykky
パピコ
「どうしてそこで叩くわけ?」
「でもまぁ、やるだけやるぜ。彼女がいつ戻ってくるか、わからないもんな」
「むむー。じゃあ、ちゃんとやったらご褒美くれる?」
「あれ…ひとり?」
「ひゃ…ふ…」
「…実は本当に嫌がってたりする?」
楽しみなような怖いような…僕は、勢いをつけて体を起こした。
「透矢! そんな場所知ってたなら、なんで連れてってくれなかったの?」
「んぁっ…ぁ…だいじょうぶ…ですわ」
僕が牧野さんを射抜いてしまう場所。
僕を挑発するみたいに、つぶやいた。
「っぁ…ありがとうございます…」
「私でもないよ。ここに来たのだって今日が初めてだし…。誰かが一緒だったのは確かなのかな?」
仕方ないだろう…うん、仕方ない。
「鈴蘭ちゃん、素直じゃないんだから」
「開き直ってるというか潔いというか」
何か言葉を飲み込んで、花梨が庄一の足をふみつける。
それでも、頑張ればこんな笑顔が見られるから、やめられない。
「じゃなくて」
「あ、アリス、なんの説明したわけ?」
「駄目です!」
981 :
シラン(大阪府):2009/06/13(土) 00:53:27.38 ID:4p8MLqx2
ike
982 :
イモガタバミ(東京都):2009/06/13(土) 00:53:26.73 ID:3hi+5fXV BE:723168386-PLT(12121)
akoもそろそろ飽きそうな予感
「どうか無理をなさらずに。気分が悪いのでしたら、続きは明日にしましょう」
イザナギとイザナミの二人は、協力して国を作った。
「大丈夫だよ、痛いところもないし」
「無理に雪を誘わなくても…花梨さんも和泉さんもいらっしゃいますし」
にこり――くらっとさせられてしまう。
「はあっ?」
それだけで、充分だろう。
鈴蘭ちゃんには、すぐ追いついた。
「和泉ちゃーん、ボクもー」
「だっさ…本気っぽいところが、かなり」
『…ふたりとも…大嫌い』
草いきれに、生臭い鉄のような臭いが混ざり合って空間を支配していく。
「良かった…ありがとう、透矢くん」
すると、和泉ちゃんはそれをさえぎるように、
…違う。
「花梨はどうしたんだ?」
「なに、心配すんな。透矢は悪い虫がつかないように、俺が相手しとくさ」
僕はそんな彼女のブラウスの下のほうのボタンを外し、隙間から手を差し込んだ。
1001 :
1001: