1 :
ヘラオオバコ(広島県):
この速さなら言えるww
今日私の誕生日wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
誰も祝ってくれなくて私涙目wwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ニュー速民のみんなwww祝ってくれwwwwwwwwwwwwwwwwww
寂しすぐる ウッ(´;ω;`三´;ω;`)ウッ
3 :
チドリソウ(アラバマ州):2009/06/13(土) 00:38:28.33 ID:yVIfSync BE:802432883-PLT(15556)
4 :
ワスレナグサ(愛知県):2009/06/13(土) 00:40:29.33 ID:Mw0tNN1V
おせーよ
5 :
ノボロギク(北海道):2009/06/13(土) 00:41:45.17 ID:XRIe/v8G
きやがった
「あの、泣かないで?」
(どういう部屋なんだ、これは?)
いきなり訪ねるのもどうかとは思ったけど、いくら電話をしても話し中なんだからしょうがない。
彼のこんな顔は、初めてみる。
なんか、一気に現実に引き戻された。
でも、だからこそ僕たちは今、肩を並べて勉強することができる。
というよりも、七夕に固執する子が、めずらしいだけだろうか?――なんにしたって変わっている。
「うん…っ…透矢くぅ…ん」
でも、僕には何を言うことも、してあげることも、できなかった。
「…好きな人、いるんじゃないか」
「うーん、どうなんだろう」
「どうしたのってねぇ、あんたはあんたで何を想像してるわけ」
「言い訳しないの。ほら、そろそろお昼にするから、ふたりとも上がんなよ」
『…もし生まれ変わるのでしたら、あんなふうに生きてみたい気もしますわ。透矢さんの恋人として』
「あーんして…わけてあげるから…」
「中で、いいから…思いっきり、動いて」
ふふん、と鼻を鳴らして、勝ち誇った顔をするアリス。
「それも、なんかムカツクわね」
「あなたとのことが、ぜんぶ夢だったことになるの?」
「そ、それって…」
非常に困った。
「…冗談よ。じゃあね、透矢」
一緒にいたのは、父さんだろうか。
記憶喪失――そんな言葉が、頭をよぎった。
『出会いがあれば別れがあるの』
ずいぶん、不安になっているようだ。
「えー、花梨ちゃん、いつもボクのこと叩くんだから、てんばつー」
「ご苦労だったね」
なのに、僕の涙はどうしても止まらなくて…
「え…ゃっ、ぁ」
「…あんたね、今ここで言うことじゃないよ。まったく悪趣味なんだから」
さっきから視界の向こうをちらつく少女に導かれてでもいるように、淀みなく、力強く。
「私には、それが、当たり前に思えない時期があったから」
元だとか自称だとか、ろくな言葉が続かない。
「いいじゃん、大会終わって、もう忙しくないんだから」
とても、いい匂いがした…。
「仕方ないのかもしれないけど、いちおう様子くらい見ておきたいから」
牧野さんにひざまくらをされた鈴蘭ちゃんが、大声をあげた。
「ごきげんよう」
「ええ、きっと、そうですわ」
「いいな…お姉ちゃん、髪、長いし、きれいだし」
牧野さんだって、こうなることは予測していただろうし…
ただ、私は、あの少女の家で一夜を明かしたのだと思う。
吐き出された息が痛みを主張する。
「言ってはいないが、何しろ勘がいい。気づいているかもしれんな」
海岸沿いにまで出れば、海からの風があるのかもしれないけど、僕らは山寄りに住んでいる。
「なんか、不思議な雰囲気だね」
「うーん、そうかもしれないね」
「ぁー、なんかわかったわ。馬鹿だから。仲間の匂いがしたのよ、きっと」
『雪と……じゃ…』
「マリアちゃん…本当に、いいね?」
「人の記憶は、完全じゃないって言うからね。都合の悪いことを忘れたりとか」
まさか、さっきの内緒は、和泉ちゃんに対しての――
こう視線が集まったんじゃ、集中も何もない。
眠っている時に見る、不思議なもの。
人の想いで何かを動かすことができると彼女は言っていた。
「可愛い巫女、って言葉から、すぐに花梨を連想できるあたり、想像力が豊かだよな」
「おまえには透矢がいるだろ。俺の愛まで勝ち取ろうなんて、ぜいたくだぜ」
「ほれ、彼女は頑張ってるぞ」
駄々っ子みたいに首を振る。
「どうか、那波と呼んでくださいな」
「大丈夫ですわ。大丈夫…」
花梨はまた、僕のものを口にふくんで、さっきよりはげしく顔を上下させた。
僕は、怖かったんだ。
止まっていた時が、動き始めた。
「理屈を説明しても、仕方がありません。今は、彼女を助けることだけを考えてくださいな」
知ってるのに…僕は、何も言わなくて、いいんだろうか。
見つめ合い、重なり合う。
「遅い!」
「もう、お上手なんですから…本当は、遠回しに雪の事をいじめていたりしませんか?」
胸の感触や、彼女の体内の温もりまで、すべてリアルに思い出すことができる。
「ごめんなさい!」
どれくらいそうしていただろう。
「…嫌じゃ、ないけど」
「んー、なんかさ、ここに掘ってある模様を、前にどっかで見た気がするんだ。透矢も見てよ」
にぱっ、といつもの笑顔を浮かべて、鈴蘭ちゃんはためらいなく、シャツをまくりあげた。
牧野さんのお父さん。
僕たちは、何度もこんなことをして…
胸の感触や、彼女の体内の温もりまで、すべてリアルに思い出すことができる。
「海が好きか?」
『ナ、ナ、ミ…』
「…仕方がありませんの。夢の中の那波はそのための存在ですから」
「…マンガだよ、そこまでいくと」
結果は、その通りだった。
僕は、飽きることなく、撫でたりもんだりを繰り返した。
彼女は、聞くまでもない。
僕は、いっぺんにそれを引き抜いた。
「雪さ…」
「あ…ううん。私こそ…調子が悪いからって八つ当たりしちゃった。そっちはどうだったの?」
「ん? わあっ!」
もう少し汚い想像をするなら、彼女の中で僕が果ててしまうこと、それ自体を望んでいた。
(きのう見た写真って、こんな雰囲気だっ たっけ?)
要するに、目の前にある世界を信じるしかないってことだ。
でも…けっきょく、なんなんだろうな、あの場所は。
やっぱり花梨は花梨だった。
鈴蘭ちゃん相手だと、マリアちゃんも、お姉さんになるんだなぁ、と当たり前の事に感心。
「寝ぼけてる?」
「恥ずかしいこと言うね。でも、うれしいからサービスしてあげよっかな」
「そっちは居間で、そこは食堂と台所だよね?」
「あ、いえ…そういうわけじゃないんですけど」
「ふふ、かぐや姫の伝説は、確かにマヨイガとこの世界との物語かもしれませんわね」
同じ世界を垣間見ながら、彼女はいったい何を感じ、何を想い生きているのか、僕にはわからなかった。
軽く肩を叩かれた。
「私? 私は何も…今日の話は那波ちゃんが気づいたことばっかりだし」
割り切ったせいか、今までのような混乱はなかった。
「自分でも、そうだと思う。ごめん…和泉なんて慣れてないから、ぎこちなかったよね」
庄一、花梨、和泉ちゃん、雪さんと、すでに四人が脱落していた。
「あとで和泉ちゃんが怒られたりしなきゃいいんだけど…」
「そんな理由で叩かないでよ」
“ざっ、ざっ”
「雪さん、相談してくれなきゃ」
僕のそれを、きゅうくつな場所から解放してくれた。
「だって、放っておいたら僕の前からいなくなっちゃうんでしょう?」
どれだけの勇気を振り絞って、この手紙を書いてくれたんだろう。
だけど、何も言わないよりはマシだと思い、話してしまうことにした。
「花梨…大丈夫なの?」
二回、三回――ノドを鳴らす。
「終わったー!」
ちょっと反応が極端なところもある気がしたけど、悲しい顔をされるよりは、よほどいい。
足にしがみつかれた。
割り切ったせいか、今までのような混乱はなかった。
「! ぁ…ゃっ…ごめっ…ごめんなさ…」
「あの、なんていうか、やっぱりごめん。私のやることって、裏目に出てばっかりだ」
「大丈夫ですか? なんでしたら、明日、こちらから伺うでも…」
「選ばれた者にしか見えない、異世界」
「以上、キミのお母さんの受け売りでございましたとさ。あのときはこれで泣きやんでくれたけど」
「すけてる感じで、なんか…」
しばらく感触を楽しんで、僕は手を下に移動させた。
察しがいい。
「ううん。透矢くんがいなかったら、私は今ごろ…」
「ついさっきだよ。もう休憩?」
「マリアちゃん…?」
「可愛い巫女、って言葉から、すぐに花梨を連想できるあたり、想像力が豊かだよな」
ただの縦すじだった箇所も、今はうっすらと開かれ、上下する指に吸いつくよう、脈打っていた。
(ちょっと、確認しておこうか)
「ふーん、あっそ。だってさ、マリア。行きましょう」
そして、そのまま振り返ることもなく、坂の上に消えていった。
「花梨ちゃんに言いたいことがあるの。いいかな?」
「手だよ。起きてから、ずっと手をさすってるじゃない。夢を見たって言う時はいつもそう」
「ぅぅ、退屈な思いをさせちゃって、すみません…こんなつもりじゃ…」
笑われたのを、根に持っているのかもしれない。
今日だってそうだ、あんなに元気な病人がいるもんか…。
でも、さすがに今回は雪さんに注意されるまでもなく、身を引くことができた。
花梨の動きが急に鈍くなったと思うと、立ち止まってしまった。
「鈴蘭ちゃんは、わかりやすいねぇ」
「なんだ、いいタイミングだな」
「あの、スクール水着、嫌い?」
「あの、お腹の調子でも悪…っぐ!」
可愛い子が自分を好いてくれている状況に、うかれている気持ちだってある。
マリアちゃんは口元に笑みを浮かべ、でも照れくさいのか、うつむいた。
ところどころ、光っているように見えるけど…
振り向くと、いつの間にやら着替えを終えた女の子たちが集まっていた。
「どーも、透矢との間にある間が気になるんだよね…」
きれいにその姿を見せた彼女の局部から愛液が、まるで、先ほどの放尿の時のように吹き出した。
「消える…?」
「ですから、透矢さんが、那波の旦那様になられている夢ですわ」
「消えるって…どういうこと?」
冷たい手、白い肌、赤い瞳…
「じゃあ、もう一回させて」
顔を出すっていう、アリスとの約束。
僕は、きっと、忘れないだろう。
「ごめんごめん。行こうか」
文字通りの、夢みたいな話だ。
文字通りの、夢みたいな話だ。
あの言葉がちらついて、離れない。
「っんう…」
「あ…いや、とりあえず、牧野さんの話が終わってからだね」
「そんなことでおどろくのなんて、マリアだけ」
「庄一くん、ジュースおごり決定だね」
「あやしいですね。ちょっと失礼します」
「ああ。そっちに、あれが厄介になっていないかと思ってね?」
「透矢…くん」
「他に何かあった?」
彼女はにっこり笑い、ご主人様の言うことも聞かず、せっせと手を動かし続ける。
「…いえ、こっちの話ですから」
「だって、いつもそうじゃない」
「魔法が、解けちゃう」
「…ま、マリアちゃん」
「今でも、そう思う?」
確かなものは、ただひとつ、抱きしめた自分の体の温もりと、抱え込んだ恐怖。
「花梨さんって、とても、素敵な方ですよね」
「ふふ、雪がいないと怖いですか?」
「するな!」
「っ…ちょっ、お腹は、いいってばぁ」
「うん、悪いけどお願い」
「呼び捨てでいいの?」
マッサージみたいなものだ、マッサージだから気持ち良くても不思議じゃない。
「ひどいこと言ったね…ごめん…」
「はい…頼りにしていますわ」
彼女が自分の父親を、おそらく殺してしまったっていうことだ。
「謝るつもりだよ。僕だって、花梨のことは好きだから」
また、ひとつの夢が終わる。
愛液だ。
「おまえもな」
何か、引っかかった。
「いや、そう言われてもね」
自分はいったいどんな人間で、彼女が存在するとしたらどんな関係なんだろう?
「おまえもな」
「要するに、これから遊びに行くから、あなたもつき合いなさいって事よ」
「夢に出てきたことを調べていけば、何か発見が…」
でも、そうされると具合がいいのか、彼女の奥からは、どんどん温かいものがあふれてくる。
「ん、んぅっ…」
「和泉の手紙に、ごめんなさいって、あったのね」
僕が作った、都合のいい設定なんかであるはずが、ない…
ところが、気持ち良さそうにはしたものの、服の裾を引くのはやめなかった。
といって、あのふたりは大抵、二人一組で行動しているから、アリスだけに伝えるのも難しそうだ。
みんなが、花梨を目覚めさせるために力を貸してくれたんだ。
吸いつくような感触に、背筋に生じた寒気が、腰を伝い、管を伝い、彼女の口内にあふれ出す。
「透矢くん、席、こっちだよ」
これを言葉で表そうとするなら、言葉では表すことができないもの、ということになる。
「透矢さん、お姉ちゃんは、照れ屋さんなんです。だから、少しずつ慣らしてあげて下さい」
「マリアー! いいってさ」
「悪かったわね…」
「わっ…」
軽くうなずき、ひと呼吸。
「さきほど、花梨さんのお父様から連絡がありまして…」
(そうだ。本を読んでいて、それで…)
二人の反応は、あいかわらず両極端だ。
“ざざーん、ざざーん”
「朝の、あれのせい?」
「それも僕がはっきりしなかったからだ」
僕には雪さんがいる。
「つながっているとは、思うけど…」
「他の子にどう思われたって、花梨とできるんだから、それでいいよ」
あの生々しさ――僕は、誰かとああいう行為に及んだことがあるとしか思えない。
とにかく、普通じゃない場所にたどりついたのは確かなようだ。
だけど、僕が言えたのは、そのひとことだけだった。
「花梨ちゃん、透矢くんと那波ちゃんがどうかしたの?」
「面識もないんだ?」
逃げなきゃ…?
ちょっと気になったので、水を向けてみることにした。
あの生々しさ――僕は、誰かとああいう行為に及んだことがあるとしか思えない。
「雪さん、あのさ」
先のほうに何かがまとわりついたような感触があって、それで、おしまいだった。
そうつぶやくと、雪さんはいつもにも増して優しげな顔をした。
しばらくして、マリアちゃんが落ちついてきたところでアリスが口を開いた。
「目覚めた日に見た写真ですよ」
部屋に、入りたい。
それ以前に…僕は、雪さんと互いにキスをしてしまった。
絹みたいにつややかな髪が、夏服のそでから露出した僕の二の腕をくすぐる。
「無理に手伝わされていたとか、そんなことはない?」
僕はさらに、彼女の言う変なところをいじらせてもらうことにした。
「僕が忘れて…それであなたは?」
あの時点では蔵を調べるなんて話もしてなかったはずだし、虫の知らせってやつだろうか。
翌日、翌々日と、花梨は体調が悪いのを理由に、僕らの誘いを断った。
「本?」
「…いいわよ、これくらいで。それなりに気持ちいいし」
はぐっ、はぐっ――ひとり鈴蘭ちゃんだけが、流し込むみたいに勢い良く、かき氷を消化していく。
でも、僕には言えなかった。
「あの…和泉ちゃん…」
「うちを調べる。おもしろい話が転がってるかもしれない」
白い肌、黒い髪、そして赤い瞳。
優しいお姉ちゃんと甘えん坊の妹、二人のやりとりには、そんな優しい雰囲気があふれている。
ものすごく怒ってるじゃないか。
覚えているんだ。
「嘘は良くないと思うな」
(そうだ…牧野さん…)
「試合、頑張ってね」
一気に険悪なムードになった。
きっ、と表情が引き締まる。
「申しわけありません。そこは、雪にも、よくわからなかったんです」
「はは…でも、真面目な話、大丈夫?」
「一緒にすんなよ、っと」
「旦那さまのところへ」
「…子供じゃないんだから」
「止めることは、できませんか?」
「透矢、透矢ったら!」
「ええと、新城ともうしますけど…」
「試合、頑張ってね」
「那波は…幸せで…」
「いいよ、約束する」
後には、一連の運動と、わずかな震えだけが残った。
「いいって言うまで、手は離さないで。あとは、とりあえず私の動かす通りに」
草木も眠る、っていう時間だ。
「そういう事でいいんだと思うよ」
「食べて食べてー」
「大丈夫ですよ。もう、ほとんど治ってしまいましたから」
「花梨さぁ」
「和泉の家、すぐそこじゃない」
「そうそう。それに、雪って写真とか嫌いじゃない。思い出せなくても仕方ないと思うよ」
ぼんやり差し込む月明かりを受けた雫の輝きは、あの、不思議な石の輝きにどこか似ている気がして、
「本当なんですよ。この子たちには…」
観念したのか、花梨は素直に答えた。
「牧野さ…っ!」
「いいから、透矢はマリアを…」
「…同じ問題に決まってるんじゃない?」
「…どうでもいいことかもしれないんだけどね」
「じゃあ…今日はこの辺で」
僕は、その手を離さなかった。
この人のくれた穏やかな時間が、僕に、そんなことを気づかせてくれたのかもしれない。
「それじゃあ、もうちょっとさぁ…」
「花梨、ショーツ…下ろすよ」
今、確かに存在するあなた。
「私はマリアにつき合わされたの」
それに取って代わるように、不確かだった何かが点となり線となり、次第に像を結んでいく。
…小学校の先生にでもなった気分だな。
「高級品だもん。だけど、私は普通じゃないから、ふっちゃうんだ」
「柔らかいんだ」
そんな都合のいい事、現実に、あるわけないじゃないか。
「んー、でもほら、どうせ、いたって役に立たないわけだし」
「何も、してくださらないんですの?」
「……すみません、雪なんかのために、気をつかわせてしまって」
観念したのか、花梨は素直に答えた。
「雨か。じゃあ、早めに切り上げたほうがいいな」
「言っておくけど、冗談だよ」
砂利を巻き込む轟音、黒い塊。
「本当に、暑くなってきましたね」
と、和泉ちゃんが手をさし出す。
「ほら。お姉ちゃん、いつもならもっと時間がかかるのに」
朝になったら、誰もいなくなっているのかもしれない。
記憶をなくす前の僕は、どんな気持ちでこの世界を見つめていたんだろう。
ただ、普通にできていたなら…こんなに友達を傷つけずに済んだんだろう。
「透矢ー、この前ってなんの話だよ」
「ぁ…ぁっ…も、もうっ! また人の胸を枕か何かだと思って」
終わりのない、自問自答をくり返しながら。
ガタガタと歯を打ち鳴らし始めたアリスに、ただならぬものを感じ、急いで引き上げることにした。
目の前で見るそれは、不思議な形をしていて、まるで、生き物のようだった。
違う、僕はそんなに立派な人間じゃないんだ。
ふと、そんなことを考えた。
「っっんぁ!」
「えー、いろっぽいよー、とか」
「続けるよ?」
「伝わりませんでしたか、雪の気持ち」
「わーったわーった。透矢たちと相談だけはしてやるから、黙ってくれ」
首を振る調子が寂しそうなものに変わった。
「どうしたのさ、にこにこして」
「言っているそばから、本当に申しわけありません。雪、気が抜けていました」
「…ごめん、我慢できない」
ほとんどの写真に写っている、女の子のような頼りない顔をした子供が、たぶん僕なんだろう。
「ああ、調子どう?」
花梨は不安げに、でもじっと、僕の行動を待っている。
「庄一…」
「透矢さんは、何をお読みに?」
彼女が、一人でしていた日のことを思い出す。
この暑さだというのに、人の姿はまったく見られない。
「あ、ごめんなさい。私、つまらない話で引き留めちゃって。お友達が待っているんでしたよね」
「透矢さん、何を読んでいますの?」
「ぁ…ぁっ…も、もうっ! また人の胸を枕か何かだと思って」
「みっともない真似をやめるか。さて、マリアちゃんはどっちがお好み?」
ひんやりと、しめった空気が充満している。
だから、なるべくしてああなったのかもしれない――
「うん…私も、こわかった…優しい人だったんだよ?」
「こういう場所が、ですわ」
僕の言葉に納得してくれたのか、気をつかってくれたのか、彼女は、ほほえみを返してくれた。
僕は鈴蘭ちゃんの言葉を信じ、彼女の示した方向に進んでみることにした。
「私がおだやかな事なんて、ほとんどないじゃない」
「でも、連絡先とか知らないんですよ」
「雪は、その…はしたない姿をお見せしてしまうと思うんですけど…嫌いにならないでほしいんです」
和泉ちゃんのことが好きだ、彼女の気持ちは裏切れない。
「胸、きゅうくつになってきちゃった」
ウロウロしているうちに、雪さんの部屋の前にたどり着いてしまった。
「そうか…そうかもしれないな」
「でしたら、明日でよろしいですか?」
「そうか…」
花梨の動きが急に鈍くなったと思うと、立ち止まってしまった。
手紙の内容を考えると、わかっていながら無視してしまうのは、気が引けた。
聞きたくないけど、聞いた。
だけど、彼女にまで見放されてしまったような絶望感は消えない。
「ママがしてくれたおまじない、する?」
なんだか、本気で迷惑がっているように見える。
「雪は、透矢さん専属ですからね」
「本当に、ごめんね…」
「じゃあ、僕もいる」
「うん。手がかりが…やっと…」
「っっっ……っ、はぁぁぁ…」
『あなたはきっと舞に失敗します』
「い、和泉ちゃん、大丈夫?」
だけど、逃げ出しそうになる僕を助けてくれたのが、この花梨だったはずじゃないか。
「えー、せっかくこんなとこ来たのに」
文字通りの、夢みたいな話だ。
花梨は涙石を両手で包み込み、祈るようなポーズを取った。
山ノ民は、どうやら平地ノ民をさらい、子をなす、食すなどといった事を行っていたようである。
同じ夢を見ていたとしたら、彼女は、どうなったんだ?
文字通りの、夢みたいな話だ。
「でも、連絡先とか知らないんですよ」
「だって…試合終わったし、休み…」
「新鮮ですよ。受ける印象も、ずいぶん違いますし」
「また、来るから」
(頑張れ…)
「だから、帰りたくない」
僕は、彼女の輪郭を形作るなだらかな曲線の上を、今までより、はげしい動きで愛撫した。
彼女はにっこり笑い、ご主人様の言うことも聞かず、せっせと手を動かし続ける。
親切な友人に恵まれていたこと、記憶は失ったけど怪我一つしなかったこと、
なでなでなで…
「…やっぱり、なんかむかつく」
「そう言われても、なかなか」
「この町の人間なら誰でも知ってるよ」
「んぅ…」
「僕だと、両手なの?」
「さっき、居場所がわからないって言ったでしょう? でも、自分の居たい場所は見つけられたの」
「…そうね。ママも見ているから」
「目覚めた日に見た写真ですよ」
「他に何かあった?」
「パパは、変な研究ばっかりだし…知ってるんだ…夜になると出かけてる」
「あとで和泉ちゃんが怒られたりしなきゃいいんだけど…」
「いや、そう言われてもね」
「僕って、そんな奴に見える?」
笑いながら、雪さんが閉じ気味になっていた足を、ぐっと開いた。
「ちょっと、透矢くんに話があって。部活は終わったんでしょ?」
そんなことを考えつつ、今日も今日とていつも通りに集まってみると、今度は牧野さんの姿がなかった。
「おまえもな」
そんな花梨を見て、和泉ちゃんが顔を逸らす。
ひいては、山ノ民というものが、ここに存在していたという事実の抹消――
ぺたんと、やわらかそうな音を立てて、すべすべのお腹が合わさる。
「おまえもな」
さっきは少し動かしただけで痛んだはずの体が、今度は痛まなかった。
(頑張れ…)
「私も、透矢さんがいい…」
彼女はこぼれた雫を指先でそっとぬぐうと、今度は、本当に幸せそうな顔で笑ってくれた。
本当に喜んでくれたんだな、とうれしい反面、今度は、気軽にやめるとまずいような気持ちになる。
「優しくしてくだされば、大丈夫ですわ」
言われるまま、足下に置かれたラジカセを操作した。
これを言葉で表そうとするなら、言葉では表すことができないもの、ということになる。
「雪ったら、アルバムを見つけておいたのにすっかり忘れていました。すぐに持ってきますね」
「あはは、それだけです。じゃーね」
…いかにもマンガ的で都合がいい。
「っ…はは」
アルバムを見るために。
「鈴が気にしてんのはキミの顔。なんか、おっかない顔してたよ、大丈夫?」
「そうだね。悪いけど部活は休むよ」
そして、僕はいつも、約束の石を持ち歩いていた。
だいたい、ここに来て雪さんに会える根拠自体、かなり薄弱なんだから仕方のないことだ。
「ぁ…ぅん……して」
今は、早く、彼女の中に。
「っぁ…はぁ…お姉ちゃんも…」
僕は、この人に対して、いったい何をしてあげられるんだろう…
「優しく、してくださいますか?」
僕がかけようとしていた手を払いのけ、アリスが脱兎のごとく駆けだした。
「当たり前でしょ。ほら」
彼女の体を抱え上げるようにして、僕は半ば無理矢理、彼女の中に自分のものを挿入してしまった。
「…だって」
「ちょっと、なに笑ってるわけ。キミにも責任はあるんだからね」
あの生々しさ――僕は、誰かとああいう行為に及んだことがあるとしか思えない。
七夕の夜の庄一の言葉。
僕は、無理矢理、二つの乳首を口にふくみ、舌で転がした。
あの生々しさ――僕は、誰かとああいう行為に及んだことがあるとしか思えない。
文字通りの、夢みたいな話だ。
「ああ、僕の家の前で会ってから…どうして?」
「そうだね…なんで、そんなこと知ってるの?」
「当然ですよ」
本当に喜んでくれたんだな、とうれしい反面、今度は、気軽にやめるとまずいような気持ちになる。
「元、医者?」
「一日に何発ってペースで叩かれてると、さすがに」
「ゃ、はっ…ぁっ…ぅぁぁぁ…」
「エロってあんた、いっちょまえに嫉妬ですか。そういうことみたいだから、キミも少し気をつけなよ」
振り返った先に、牧野さんと、彼女の父親の姿があった。
それ以前に…僕は、雪さんと互いにキスをしてしまった。
二人とも、僕の目を見つめて離さない。
「邪魔って、なんの…?」
「マリア…」
「すみま…せっ…」
「…他のみんなは」
梓弓、涙石、そしてマヨイガ。
「願いをかなえてくれる、とか言ってたよね」
納得し、首を横に振った。
「おかしいよね、いちいちこんな、理屈っぽい」
「気にしなくていいから」
「んっ、おいしい」
だいたい、夢に意識だけが閉じこめられるなんて、あり得ない話なんだから…
甘えるように言い、すり寄ってくる。
足のケガのせいか、花梨の体は、簡単にバランスを失い、倒れこんでしまった。
家には誰もいないみたいで、応対には、牧野さん本人が出た。
ひと段落したところで声をかける。
眠っているわりには、正確に、従順に、僕は彼女の言葉に従っていた。
「お急ぎくださいね。あまり、時間がありませんから」
「普段お世話になってるんだし、僕がおごるよ」
新たに浮き出た汗を拭いながら、やわらかいほっぺたを撫でた。
「試合、頑張ってね」
そんな時に、彼女の口から和泉ちゃんの名前が出てきたんだ、慌てもする。
「試合、頑張ってね」
「ええとですね…変なこと言ってもいいですか?」
「良かったら、また、つき合わせてね」
「おまえもな」
だいたい、夢で言われました、信じてくださいっていうほうが、どうかしてるんだから。
「っ…はぁ…」
「あの…花梨、なんだけど」
「エロってあんた、いっちょまえに嫉妬ですか。そういうことみたいだから、キミも少し気をつけなよ」
「い、いいってば。動物が相手じゃ仕方ないよ。また次の機会に見せてよ。楽しみにしてるから」
だいたい、僕と接点のある人間なら、事故のことだって知っているはずだ。
今後、あのキツネが顔を出してくれないならば…今の話を信じていればいい。
中途ハンパな気持ちで彼女を抱いて、それで、手放した。
「う、うーん…任せるよ」
後には、一連の運動と、わずかな震えだけが残った。
そして、思い切り腰を前に出しながら、彼女の局部の突起をつまんだ。
僕たちは、和泉ちゃんに何もしてあげられなかった。
狭くて幼さの残る、彼女への入り口。
「いや、いるけど、僕に用事があるんじゃなかったの?」
「痛いけど、大丈夫だと思う…」
とはいえ、記憶喪失のほうは、未だ回復のきざしが見えない。
抱いた抱かないだけで、判断できるものじゃないのかもしれない。
「那波」
しばらく考えてみたものの、けっきょく僕は、なんのお願い事も思いつくことができなかった。
他の夢はともかく、これは、やっぱり僕なんじゃないか?
僕は、異様な夢の恐怖から逃れるため、動き出していた。
「あ、ああ」
「ぷぁ…おねー…ちゃん」
「防空壕…ああ、そういうことか」
(そもそもなぁ…)
「無理しないほうがいいよ。それで…きのうのアレ、何かわかりそう?」
僕に優しくしてくれる人たちが――僕の寂しさが作りだした幻像だったら、夢だったら?
だから、雪さん…
(なんだ…)
「あはっ、良かった…。ありがとうございます、透矢さん」
観念したのか、花梨は素直に答えた。
観念したのか、花梨は素直に答えた。
どうしても、雪さんの顔を、まともに見ることができない。
「庄一、いったいどうやって?」
「もうひと口ぃ〜」
「いや、別に僕のおかげじゃ…」
さしこむ日射しを跳ね返すように、鋭い軌跡を描き、次々に矢が放たれる。
あの生々しさ――僕は、誰かとああいう行為に及んだことがあるとしか思えない。
「それじゃあ、また…明日はあそこにいると思うから暇があったら来て。あ、本は返しといてねー」
むせかえるようだけど、どこか、懐かしいような気持ちにもさせてくれる。
だいたい、僕と接点のある人間なら、事故のことだって知っているはずだ。
「ぅ…だ、だから、アレはアレ!」
「…こういうの」
「…キスはした。でも、他のことはしてないし、されてない」
「すごいね、透矢の心臓の音」
嫌な絵が浮かんだ…マリアちゃんに見せるべきじゃない。
はるか彼方から聞こえる波の音に、白日夢を見ているような気分になる。
と、和泉ちゃんが手をさし出す。
「花梨とは正反対だね」
「庄一さんは、そのことについて何かご存じなんですか?」
押し付けるようにして、指を上下させると、細いすじの存在を確認することができた。
「アリス、嫌なこと言わないでくれる…」
「…どっちかっていうと気持ち悪かった」
牧野さん、大丈夫なのか…
「よっぽど痛かったんだね」
(雪さんの匂い…)
まあ、明日にでも聞けばいいか。
それも、元より覚えているか怪しかった母さんの事。
「いや。でも、それって気をつけないと、花梨とかに…」
拳をにぎって、僕は立ち上がった。
「馬鹿…」
「町を、出ようと思うの」
「二人で布団を敷いて――なんて、ムードないよね」
「那波の誕生日は、七月七日ですの」
夢の中にいた。
アリスが足を閉じようとすると、マリアちゃんは、あわてて腰を下ろした。
僕が、離れたかったのかもしれない。
「和泉ちゃん、牧野はなんともなかったのか?」
「そんなこと…」
と言いつつ、また歩き出す。
「はいっ。透矢さんには、次の機会に見せる約束ですし…その、楽しみにしてくれてるみたいだったから」
「ぁ…ぁっ…も、もうっ! また人の胸を枕か何かだと思って」
彼女の、言う通りになった。
「あれは、透矢のためだから…私のことは関係ないわよ」
「ただ、その後すぐに、お父様が起きてしまわれて…一瞬のことでしたから、雪の勘違いかもしれません」
「いいけど、何?」
「試合、頑張ってね」
「おねーちゃんっ!」
「そんな気がしますよ。あんな危ない運転をするんですもの」
「…キミは、あれのことが好きか?」
「大丈夫ですよ。ただ、ちょっと、ぼうっとしてしまって」
「だからですね、えっと、また明日にでも一緒に遊んでくれませんか?」
「ちょっ…マリア…」
離れたくないな、と思った。
「仕方がないですね。花梨さん、このことは他言無用でお願いします」
「…そうかな」
「漫画じゃあるまいし。学者の端くれなんだろう? 嘘やいんちきは、いい加減にやめてくれよ、父さん」
心配なんだろうか?――自分でも、よくわからない。
「気にはするけど…ごめんね、力にはなれないや。私じゃなきゃ嫌、って言うなら考えてもいいけど」
「へえ。でも、それじゃあ、僕がいると邪魔にならない?」
「俺がひとっぱしり行って来ようか?」
「ねえ、和泉ちゃん。どうして僕は僕だって?」
宮代という言葉に、和泉ちゃんの表情がわずかに強ばった。
言葉をつなぎあぐねる僕に、彼はおもむろに右手をさし出してきた。
離れたくないな、と思った。
つらぬくような冷たい感触。
「僕も、よくわからないんだよね」
小さな子供のように、わんわん、わんわんと。
「悪かったな、いろいろ面倒かけて」
「二人ともありがとう。口はもういいよ…今度は僕がしてあげる番」
「うん…だから、もう想像しないでね?」
「恥ずかしい思いをさせたから、仕返し。だから…」
「服が汚れるから嫌だな…。透矢、よろしくね」
「一緒に寝てください」
「あらあら、眠そうなお顔をされていますね」
「でも、連絡先とか知らないんですよ」
「無理だよ。僕と事故に遭って、まだ意識が戻っていないんだ」
左右から波紋が生まれ、間でぶつかり合う。
辛いこともたくさんあるけど、そうやって、生きていこう。
「なんで、あんなことしたの?」
観念したのか、花梨は素直に答えた。
僕は牧野さんのお見舞いにだって行っていない。
「お、おねえちゃん、それって、関係ないんじゃ…」
人を殺したり女の子を抱いたりする夢なんて、いちいち真に受けてられないよな…
「マリアと同じ…平和な人なんだ。ホントに、良く似た親子よ」
「じゃあ、なんにしても内輪もめか…」
雪さんはにっこり笑って頭を下げた。
「痛くない?」
アリス、こういう時は異様に恥ずかしがりだ。
「僕はお互い様だから」
「それは、いつ?」
「あぅ…ご、ごめんなさい」
もう、駄目っていうことなのか?
「わかりますわ。だって、透矢さんをあそこに連れて行くのは那波の役目なんですもの」
和泉ちゃんが、きのうと同じ顔をした。
「そうですね。お父様が、あまり好きではないんですよ。雪も苦手ですし」
ごしごしごし。
「…うん。じゃあ、そろそろ?」
「力抜いて。余計なことも考えない。私を信じて。治るってイメージして」
「まあ、和泉ちゃんちの土地みたいなもんだからな…彼女がいいって言うんだし、いいんじゃないか」
僕は、彼女と目を合わせ笑った。
「それは、いつ?」
でも――僕を見上げては伏せられる落ちつきのない瞳が、彼女の言葉に続きがあることを物語っていた。
「ゆ、雪さん、これはちょっと…」
ぜんぶ、僕の夢だったんだ。
「花梨、ちょっと待ってくれないかな」
「那波…那波…!」
もともと、ギリギリのところで保っていたものが、わずかながら、溢れ出てしまった。
「大したおもてなしは、できないけどね。ただし、今日だけだよ?」
「憑き物だって? 彼女は人間だ、雪って名前がある。いちいちわけの分からない言葉を使わないでくれ」
(頑張れ…)
「ですが、おもしろい夢ですわね。言い伝えと違っていますわ」
「っぐ! っぅ、ぅぁ、ぁぁぁ」
彼女に組み敷かれた、あの夜。
「ぷぁ…おねー…ちゃん」
「ぁ…ぁっ…も、もうっ! また人の胸を枕か何かだと思って」
「うぅ、また機会があったら、よろしくお願いしますね」
「う、うん、わかった」
僕は、怖かったんだ。
急ぎ足で坂道を下っていくと、アリスの息が上がってきた。
雪さんが、僕に向かって、語りかける。
「んー、やっぱりそうか」
「ああ、大和家秘伝の読唇術だ。特別に伝授してやろうか?」
「あれ…ひとり?」
「しないってば。そんなふうに見えた?」
「ええと、たぶん…」
「いいけどさ。なんか引っかかるってことは、キミの記憶喪失が治ってきてるってことなんだろうし」
敷地の中を覗いてみるも、人の気配はない。
改めて見ると、こんなに綺麗な子を、どうして意識しなかったのかと、不思議にすら思える。
拝殿の裏側は思ったよりも広い。
「だから…あまり、私には手をかけてくれなかったんでしょう、私には」
「本当なんですよ。この子たちには…」
「は、裸…?」
なのに、雪さんは、そういう写真を一枚も残していない。
「あれ…ひとり?」
「まあ、牧野さんの体調が良くなんないと話にならないけど。…そろそろ、図書館のほう、行こうか?」
「最低なこと、したよ」
アリスは、おねえちゃんの顔で僕を見つめて言った。
いろいろな絵が、浮かんでは消えた。
「んーっ、遊んだ遊んだ。キミたち、楽しめた?」
きついしめつけに、吸い上げるような感触。
と誤魔化すように笑って立ち去ろうとする花梨。
ともすれば、それは夢の再現だった。
「でも、連絡先とか知らないんですよ」
「えへー。透矢ちゃーん、ご褒美」
胸への愛撫を続けた。
本当に喜んでくれたんだな、とうれしい反面、今度は、気軽にやめるとまずいような気持ちになる。
だから、僕はその手を離した。
「花梨ちゃん…」
「それは構わないけど、何を?」
…かなわない。
「冗談ですよ。経過も良好ということでしたし…記憶が戻らないのは透矢さんのせいではありませんもの」
彼女たちは、いったい…?
「そうでもないよ」
「退屈しなくていいんじゃない?」
もっともっと、優しくしてあげるつもりだったけど、駄目だ。
不意に現れたその人は、じっと、僕の顔を見つめて――
「そうだね。悪いけど部活は休むよ」
アリス、こういう時は異様に恥ずかしがりだ。
「居眠りくらいで何? そんなの、私だって毎日やってるじゃない」
僕はマヨイガに首をつっこんでしまったということだろうか…?
今は、ただ姉妹ケンカの仲裁に入っているのと変わらない。
そして今日も、書斎には雪さんがいた。
「念のためだよ。雪さんは大げさだから」
むっとした空気が、背中から染みこんでくる。
手慣れた動作でポケットから鍵を取り出す雪さん。
「ありがとう。じゃあ…いいかな?」
「遠慮します。でも、アリスって意外と寝起き悪いんだね」
不意に現れたその人は、じっと、僕の顔を見つめて――
「まあまあ。ふたりは何してるの? この辺りって何もないと思うんだけど」
「庄一の、家?」
「信用してるんだね、花梨ちゃんのこと」
「花梨に? なんだろう…」
今のところ、予想していたのと、かなり違う状態だ。
「バイクでとなり町か…ホントにがんばるね。何か欲しいものとかあるの?」
「私たちのお母さん、とうの昔に死んでるのよ――って言ったら、納得できる?」
(頑張れ…)
「でも、途中までは…」
女の子のショーツを脱がすなんて初めてだ。
「エロってあんた、いっちょまえに嫉妬ですか。そういうことみたいだから、キミも少し気をつけなよ」
と、馬鹿なことを考えつつ、撫でるようにしながら揉んだ。
(筋は、通るよな…)
無我夢中でそれを続けた。
スイカの手前から、僕の今いる方へ、子連れのカニが歩いてくる。
「なーんて、思ったことない?」
「和泉ちゃんって、そんな子か?」
「雪、駄目ですね。ご迷惑ばかりおかけして」
「ぁ…っ…ぁぁ…」
「何それ? ひょっとして、気でもつかってくれてるの?」
きのうの今日である。
ほっぺたに触れる。
花梨の相手が嫌とかじゃなくて、どうも和泉ちゃんの花梨に対する気持ちがわからないから。
「本当にすみませんでした。せっかく、透矢さんに買っていただいたものを」
「透矢さん、お腹…好きなんですか?」
その体は異常なほどに軽く、少女の衰弱が、かなりひどいものであることを予感させた。
目を細めて、雪さんは、僕の望む通りの動きをしてくれた。
「また、からかおうとして…図書館は逃げないよ。体調が大丈夫そうなら、本当に明日つき合うからさ」
「ごめん…本当にごめん」
和泉ちゃんはとつぜん、すっとんきょうな声をあげると、花梨と僕の顔を、何度も見比べた。
無縁墓地のことにしても、父さんは『すまん』の一点張りだったという。
彼女の期待を裏切るそのひとことが、どうしても言えなかった。
果たして、そこへは何も考えずに来ることができた。
ほっぺたに触れる。
「僕が行って、なにかできることある?」
引けないのは、わかっている。
和泉ちゃんが、ぽんと手を打った。
「そういうことか。でも、花梨…」
「だって…涙、止まらないんですもの」
本当に喜んでくれたんだな、とうれしい反面、今度は、気軽にやめるとまずいような気持ちになる。
「ぁ…そっか、そうだよね。親がいるはずだもんね」
「…えっ?」
だいたい、僕と接点のある人間なら、事故のことだって知っているはずだ。
でも、彼女がひとりで花梨にそんな話をした日には、それこそ最悪の事態になりかねないだろう。
たくさんのことを吐き出していた。
「道場主?」
さっそく、翌日から日記帳の捜索を開始した。
「そうだね…探してみる」
「重要なのは、自分とっての現在が、どういう世界かってことでしょう?」
「そんな顔しないで、怒ってるわけじゃないから」
「ホントだよ。髪をほどくと、大人っぽくなっちゃうんだね。今まで気づかなかった」
アリスとは逆に、マリアちゃんは拍子抜けしたような調子で言った。
きのうの夜と同じ――違うのは、目の前に彼女がいるっていうこと。
そうだな…。
「座って良しって言ったのに、立ってるんだもの」
「そっか…大丈夫、いい匂いしかしなかったよ」
「花梨! わざわざ誤解をまねくように言わないでよ」
「はい、おしまいです。少しは楽になりましたか?」
マリアちゃんが、アリスの下腹部に手をはわせ始めた。
「まあ、金庫ってわけでもないし、その辺にありそうだよね」
「怖がってるよ。やめない?」
「…キミは、あれのことが好きか?」
「透矢が来るまでの間、ずっとやってたんだから…」
「謝らなくていいよ。気にしてないから」
「じゃあ…花梨…?」
そう言って、雪さんはもういちど握った手を離し、そこを撫で始めた。
しかも、この炎天下の中、外で半日以上も遊ぶとなると、体力の消耗が激しい。
「七月七日七時、宮代神社に集合なんだけど、宮代神社の場所、わかる?」
いない。
「座って良しって言ったのに、立ってるんだもの」
ここ、どこだ?
雪さんをベッドまで運んで、小一時間が経過した。
自分を笑ってみたものの、僕は、この子供じみた体に興奮していた。
「あーん」
「エロってあんた、いっちょまえに嫉妬ですか。そういうことみたいだから、キミも少し気をつけなよ」
「…キミは、あれのことが好きか?」
夢のイメージも相まって、なんだか地獄への通路を連想させる――うす気味悪い。
見た目にはぺったんこだけど…触ってみると弾力がある。
「負け惜しみ?」
「この前、ナナミちゃんが言ってたんだ。赤ちゃんを作るのは、すごく痛いんだって」
できることなら触れないで済ませたかったけど、きのうの事に触れないと、どうも話にならないようだ。
「どうしてなの? マリアのためにやってるのに…どうして?」
「聞いてくださいな。だとしたら、わたくしは、もう帰らなければなりませんの」
「母は、美しかった、ちょうどこれのように。そして優しかった」
はじめて、三人がお見舞いに来てくれた日、
「今の僕が首を突っ込むことじゃないと思うんだ。冷たいかな」
「…わかった」
「ぁ…ぁっ…も、もうっ! また人の胸を枕か何かだと思って」
そして僕は、この子の笑顔を守っていこう。
「知らないよ、馬鹿っ」
夢のこと、七夕のこと、彼女には不可解な部分が多すぎる。
「ぁ…えと…」
「北極星なんでしょう?」
「また?」
「っ、ぁ」
ワンピース越しの彼女の胸に、ほとんどふくらみは感じられなかった。
「いいから! なんのために来たのよ」
「あぅ…ご、ごめんなさい」
風船じゃなくて、僕に。
「ふーん。それじゃあ、毎朝これで起こそうかなぁ。効果ありそうだし」
僕は、少しだけ彼女との距離をつめ、手を引いた。
何をもって終わりにするのか…僕が、彼女の中で達すればいいんだろうか?
胸さわぎを感じ、乱暴に封を切った。
「っ〜〜〜!」
「透矢さん、お腹…好きなんですか?」
「おねえちゃんが、この場所を嫌がるのはあそこのせいじゃない?」
しばらくの間、ふたりで手をつなぎ、立ちつくしていた。
「失礼しました。雪は食堂のほうでお待ちしていますから、着替えが終わったらいらしてください」
「ねえ、花梨、しっかりしてよ」
「知らないよ、馬鹿っ」
「目覚めるだけですわ。本来あるべき所に帰りますの」
「ふーん、勉強会ねぇ」
あのとき背中に感じた花梨のぬくもり、ずっと一緒にいてほしいという言葉。
だいたい、僕と接点のある人間なら、事故のことだって知っているはずだ。
雪さんは惜しかったけど、僕の声につられすぎてスイカを通りこしてしまい…
子供たちの声を聞きながら、僕は、手近なベンチに腰を下ろした。
「それが冗談にならないのが、あの子なのよ。でも、もうひとつのほうに行ったみたいだから…いいわ」
「ほら、大丈夫」
それにしても…いくつかのキーワードに引っかかるものがあった…まるで、僕の夢みたいな。
「ほーらー、私たちも適当に休もう」
「…もう、決めたことなの」
「だけど、私にできることなんて、もうないよ。あとは、さっき教えた通りに引くだけなんだもん…」
「マリアちゃんが?」
「ひぅ…っ、くぅ…」
「楽しみですね。男の子かな? 女の子かな?」
「裏山への通路があるくらいだけど…」
「俺にしろ花梨にしろ、おまえとは弓道だけのつき合いってわけじゃないんだぜ」
「でも、連絡先とか知らないんですよ」
「おだてないでくださいよ。それに、あくまで応急処置ですからね、無理はされないでください」
そう考えて、僕は、手紙を引き出しの奥へほうり込んだ。
と、一冊の本を投げてよこす。
「遠慮します。でも、アリスって意外と寝起き悪いんだね」
じゃあ、この血の主は、どこだ?
アリスのほうが落ちついているのは、その力の差のせいなのか、単なる性格の問題からなのか。
「で?」
あの時、牧野さんは僕と同じ夢を見ると言っていた。
おどろき…最後のひと突きをした直後に僕のものはすっぽ抜けてしまい、
当然のように言う花梨が、今日は妙に腹立たしかった。
「はは…でも、僕はそういうお姉さんで良かったと思う」
「夢で見たんだ。ここは…僕と那波が…」
病院で目覚め、一ヶ月以上が過ぎ、検査の帰りに牧野さんと出会って、図書館に来て――
「別に…こっちの話よ。大した保険じゃないし、都合悪いなら別にいいわ」
「いや、僕も楽しかったから」
よほど感じたらしい。
「痛いんでしょう?」
それでも、彼女は真剣だし、ぜんぶ理解した上で行為を続けている。
「…きのうも褒めたんだから、何度も言わせないでよ」
「ええ。ときどき、こういう事がありますの。透矢さんの夢もそうですし…」
「ニヤニヤしないのぉ。誰のために、こーんな暑い思いしてると思ってるわけ?」
車道はやはり坂道になっていて、正面、坂を下った先には、
「…キミは、あれのことが好きか?」
「試合の時は大将の役目なんだよ。おまえがやれ」
「あん…っ…や…」
そう考えて、僕は、手紙を引き出しの奥へほうり込んだ。
葭植えて 葭植えて…
抱きしめてみて、わかること。
「あは。おねえちゃん、お風呂でいっぱい洗いっこしたからだよ、きっと」
(頑張れ…)
本当に、そうだ。
「花梨…おまえ、それは言い過…」
「どうして? こんなふうに一本だけ木が立っていたら、目立つと思うんだけど」
「自分から振ったくせに」
「ごめんなさい。花梨ちゃんと、今まで通りにはできないと思う。どうしても意識はしちゃうから」
「っぁ…っ…大丈夫?」
和泉ちゃんの後ろで、庄一がニヤニヤと笑った。
「…って、透矢の頭だったら、日本史の勉強したほうが早いか」
「よく、覚えていてくださいましたね」
「わかった。ごほうびは、あんまり高いものじゃなければ。それでいい?」
「僕が憑かれそうだよ」
再びだらっとなりかけた気分を、凛とした声――と背中への強烈な平手打ち――が吹き飛ばしてくれた。
「ゴム弓…」
「あのね、僕はここの学生なんだから」
そして同時に、とても不思議な感じがした。
でも、どうやら嫌がってはいない。
「それより、レポートとか、けっきょくどうするの?」
「雪のことも、忘れてしまいましたか?」
僕は、痛くしないように気をつけながらそっとマリアちゃんの胸を撫でた。
僕は、最後に向けて、強く腰を揺さぶった。
雪さんに手を握られて、いっぺんに、元気になる。
「僕の考えてることくらい、お見通し?」
蔵書は、すべてコンピュータで管理されていて、女の子がカタカタとキーボードを叩いたと思うと、
「いちおう聞きますけど、那波さんは知っているんですか?」
当然のように言う花梨が、今日は妙に腹立たしかった。
「…あまり往生際が悪いと、もっと怖い思いするのよ?」
「はいはい、服が乱れるから、しがみつくんじゃないの」
「はは…ちょっとドジしちゃって」
864 :
ビオラ(東京都):2009/06/13(土) 00:42:15.06 ID:vJwr4VHQ
スクリプトで火に油
ざまあああああああwwwww
「わかった。それじゃあ、アリス」
「やっぱり、じかに触ると違うね」
「駄目だよ、そんなこと言ったら」
「あぅ…ご、ごめんなさい」
「…わからない」
日付が変わるまで、僕は那波を抱き続けるつもりだった。
「僕は…ふたりのこと可愛いと思うし…好きだから…うれしいけど」
「わかった。もうしないから、そんな顔しないで?」
「あ、ああ、瀬能透矢だよ」
874 :
ヘラオオバコ(広島県):2009/06/13(土) 00:42:15.11 ID:m12F3WRD BE:1825260285-PLT(12000)
勢いワロタ
岩の裏には、洞窟がある。
意味深長な言い方をする。
「僕への、言づけだって?」
いちども僕を振り返ることなく、当たり前の顔で車に乗り込んでしまった和泉ちゃん。
なんの話だ…?
「どうって言われても」
「はい…透矢さんの…雪の中で…すごいんですもの…」
本当に喜んでくれたんだな、とうれしい反面、今度は、気軽にやめるとまずいような気持ちになる。
どこかぎこちない態度の雪さんに手を引かれ、坂を下っていくと…
かき氷を消化したかったわけじゃなくて僕に食べさせる事、が重要だったらしい。
「図書館で勉強の約束が…」
本当なら、僕も同じように弓を取り、真剣に練習していたんだろうな…
「どうしてさ? 庄一、なんか、花梨に冷たくない?」
「雪のことも、忘れてしまいましたか?」
「だから、遅刻しないためにも、もう行くよ。包帯はいちおう持っていくから」
ぷうっとほっぺたをふくらませる。
「大丈夫。夢は、夢だよ」
「日本史のおまけ問題の話だよ…花梨ちゃん、聞いてなかったの?」
「っ! ぃぁ、っぁぁ…」
同業者、とか?
「戻って来られたようですね」
「あの日…」
「ふーん。まあ誘ってはみるよ」
「…ええ。ですけど、最初は雪にさせていただきたいんです」
アリス、一流の調教師だな、やっぱり。
「マリアちゃん、どうしたの?」
まるで吸い付いてくるようだ。
「男ふたりで連れだって祭りってのも華がねえよなぁ…雪さん、駄目なのか?」
「そういえば、透矢」
言われるまま、足下に置かれたラジカセを操作した。
もういちど、唇をつける。
「よく、覚えていてくださいましたね」
「完璧…それより花梨だろ」
「ありがとう。でも…」
「うん…私も、こわかった…優しい人だったんだよ?」
「自我が、薄い?」
「ええ」
なんだか知らないけど、花梨はさっきから不機嫌だ。
「あぅ…ご、ごめんなさい」
当然のように言う花梨が、今日は妙に腹立たしかった。
「お母さまですよ」
「いいも悪いも…マリアちゃん、無理してるんじゃ…」
「消えてしまいましたね」
けっきょく、お茶を終えるまでの間、雪さんはにこにこしっぱなしだった。
やっぱり怖いらしい――僕は、彼女の手をにぎり返してあげた。
ホントに同い年の学生か、この三人?
「おねーちゃんっ、透矢さんに失礼なこと言わないで!」
僕はそれを確認しながらも、下腹部を伝う温もりがあまりに心地よくて、腰を引こうにも引けずにいた。
「いっ…っぁ…透矢っ…すご…っ…」
「大丈夫?」
僕は、胸への愛撫を行いながら、腰を動かした。
なんだったんだ、いったい?
「うん…ぅ…」
柄のところに、波打つような、奇妙な模様が彫り込まれている。
「エロってあんた、いっちょまえに嫉妬ですか。そういうことみたいだから、キミも少し気をつけなよ」
『なんか、感じ悪いのよね』
ただ、儀式の色合いが強く、特に何があるというものでもない。
「こんにちは。お帰りですか?」
彼女が幽霊とか、そんなオチでもつかない限りは、だけど。
「まあまあ。大丈夫、鈴蘭ちゃん」
いま考えたら、どうして雪さんの指を舐めるなんてことができたのか。
今度は、はっきり和泉ちゃんの匂いがした。
「牧野さん、からかってるの?」
庄一は、ちらっと和泉ちゃんを振り返ると、気まずそうな顔をしてうずくまってしまった。
「…どっちも」
「ううん。やっぱり、私たち、気が合うみたい」
「…さっきの津波は、それじゃあ」
お互いに顔を伏せていると、庄一が笑い出した。
それとも、アリスは何か別の意味で『あやかし』と言ったんだろうか?
独特の張りつめた空気。
それ以前に、夢が終わりはしないか。
にしても――
「だから、遅刻しないためにも、もう行くよ。包帯はいちおう持っていくから」
お互いに、わかっているから返事もしなかった。
僕らより、ひと足もふた足も先に到着した和泉ちゃんは、今も、ひとりだけ平然とした表情のままだ。
「ひどくないよ。ありがとう、花梨」
「鈴蘭ちゃんなら、那波ちゃんと遊ぶって言って戻ったよ」
「…透矢、自分で言ったことには責任を持ちなさいよね」
「わかった。もうしないから、そんな顔しないで?」
「そうだね」
「先生も言ってたよ。その調子で弓道を続けるといい、って」
「そうね。おかげでラクチンだったわ」
ちょっとしたことで、どの子も可愛く見える。
「いえ。あのぅ…」
「はは…敵わないな、庄一には」
やがて、“ぽんっ”とはじき出された先には…
「恋愛っていう意味では、そうだね」
と、アリスは自分の胸を見下ろした。
「んーーーーっ」
「うん…じゃあ、また明日」
「雪のことも、忘れてしまいましたか?」
彼女に相談したら、また認識がどうとかいう話になりそうだ…やめておこう。
体も、まったく動かなかった。
何か、因縁めいていて、気味が悪くもあるけど…
しかし、そこに至るまでに、容易ではない道のりがあったのは、まず間違いない。
そのため、戦争中に価値ある資料の多くが失われたのは、ほぼ疑いようのない事実と言っていいだろう。
「だって…これで『わーい』って喜んだ所におねえちゃんが出てきて、怒ったりしませんか?」
愛液と血のまじりあった液体が、ぐちゃりと、みだらな音をかなでた。
「み、水着、似合って良かったなぁ…って思っただけぇ…」
「食べて食べてー」
当然のように言う花梨が、今日は妙に腹立たしかった。
そう…
眠い。
とはいえ、いちど意識し出すと、やっぱり照れる。
和泉ちゃんがいなくなって、花梨があんなことになってしまって、
「ホントに長い髪だね」
てけてけ、がしっ、よじよじ…
僕の父さんはその阻止派に属していて、中心人物的な扱いをされているという。
「また、そろそろ甘えられる側になるのもいいかなぁ、なんて思ってる」
「んっ…ぅぅ…」
986 :
ビオラ(catv?):2009/06/13(土) 00:42:20.07 ID:JzhmJY7P
あ
「うーん。まあ、考えてもわかんないものはわかんないよね。仕方ない…荒療治する?」
「ねえ、さすがにもういいよ」
だいたい、僕と接点のある人間なら、事故のことだって知っているはずだ。
「うーん、やっぱり自然に戻ってくれるのが、いちばんっていうことかな」
「まあ、いいけど…お願いだから、危ない所とかには行かないでね」
「ひぁ! か、花梨ちゃぁぁん…」
「透矢さん、雪なら、大丈夫ですよ」
ピンク色のきれいなひだの中にある、小さな穴。
「もともと、私と透矢くんとは、ただの友達だったんだもん。泥棒猫なんて思わないけど…」
「家よ、家。あの子には他に行くところが無いんだから」
「ぼんやりしていて…『あれ?』と思った時にはいなかったんです。見ませんでしたか?」
「ホントですか?」
「その手さ、俺が握ってもいいか? 透矢の代わりにはならんだろうけど、なんていうか、その…」
「それにしても、なかなか、うまくいかないものですね…」
1001 :
1001: