【異論暴論】正論7月号 国家意識欠けた安易な同情
■カルデロン一家報道の欺瞞
4月に埼玉県蕨市に住むフィリピン人のカルデロン一家の去就がメディアの耳目を集めた。
日本で生まれ育ち、地元中学に通う長女は「悲劇のヒロイン」の如(ごと)く報じられた。
「不法入国は事実だが、既に長い時間が過ぎ、一家は幸せな暮らしを営んでいる。
政府にその幸せを奪う資格があるのか」。報道でそう思った人は多かっただろう。
批判にさらされた法務省は彼女に特別在留許可を認める。父と母は娘を残し、日本を離れた。
「家族みんなで日本で暮らしたい」という、彼女の涙ながらの訴えを日本政府は聞き入れず
家族のきずなを引き裂いた−といいたげな報道が展開されたのだった。
この騒動は一体何だったのだろう。既に最高裁での係争を経て正当性が認められた
国外退去処分が確定し、現実に実施の段になって、「少女の涙」を盾に骨抜きにされては
入管行政の公正さなど保てない。同情を盛んにあおり立てたメディアは“ゴネ得”に手を貸した
といわざるを得ない。法治国家の根幹をゆるがせにしないためにも、メディアに突きつけられた
課題は重い。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090602/plc0906020810002-n1.htm