【天安門事件】日本の歴史教科書には敏感な中国政府が、自国の「負の歴史」にはいたって鈍感である・・・北國新聞
民主化運動が武力弾圧された中国・天安門事件からきょうで20年を迎える。民主化を 求めて学生や市民が占拠した
天安門広場に人民解放軍の戦車や装甲車が突入し、多数の死傷者が出た。死者は人権団体の推計で、2000人以上
とも言われている。
それから現在まで、中国政府は一貫して「反革命暴乱」とした公式評価を変えず、詳細 な事実を公表していない。日本
の歴史教科書には敏感な中国政府が、自国の「負の歴史」にはいたって鈍感である。目覚ましい経済発展で国力が増
すにつれ、ますます外部の批判に耳を貸さぬ国になっていく印象があるのは残念というほかない。
天安門事件のきっかけは、胡耀邦元総書記の死去だった。民主化要求デモが全国に飛び 火し、天安門広場が武力制
圧された。趙紫陽総書記は「動乱を支持した」として失脚し、趙氏が進めていた政治改革は頓挫した。中国の人権無視
の強権政治は、このときから少しも変わっていないように思える。
犠牲者の遺族や支持者たちは▽真相の究明▽犠牲者への賠償▽責任者の追及▽亡命者の 帰国▽投獄者の釈放な
どを求めているが、中国政府が、天安門事件の再評価を行う気配はまったくない。中国全土で今、職を失った出稼ぎ労
働者や土地を強制収用された農民らによる暴動やデモが頻発している。武力弾圧の過ちを認め、謝罪することで民主
運動が再燃することを恐れているのだろう。
それでも民主化を棚上げしたままの経済発展には危うさもある。経済発展とともに貧富 の差が広がり、中国社会が抱
える「爆弾」は大きくなるばかりだ。暴動に限らず、市民運動や学生運動がかたちを変えて第二の天安門事件を起こす
可能性も否定できない。
中国の人権問題を厳しく批判してきた欧米諸国は、中国経済の巨大化とともに声が小さ くなってしまった。オバマ政権
も人権問題より中国との協調を重視しているように見える。欧米よりさらに声の小さな日本は、人権を置き去りにしたま
ま「超大国」となっていく中国を、ハラハラしながら見守るだけなのだろうか。
http://www.hokkoku.co.jp/_syasetu/syasetu.htm