鬼のイルマタルユーティライネン

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1 スノーフレーク(アラバマ州)

鬼の居ぬ間に洗濯

2009年5月19日0時20分

インドネシア・ヌサドゥアでの東南アジア諸国連合と日中韓の財務相会議で、
日本は6兆円のアジア向け円建て融資支援策を発表した。
アジア諸国に円を使ってもらい“悲願”である円の国際的地位向上を目指すという。
中国の人民元の台頭をにらみながらの戦略とも言われるが、
人民元は世界一のドル保有という裏打ちだけで元の実力と評価するわけにはいかない。
いつでも、どこでも、誰でも自由に交換できるという国際通貨の要件はまだ満たしていないからだ。
また人民元を世界的に回す歯車の国際金融制度も国内整備されていない。
中国人民銀行の周小川総裁はドル、ユーロ、円、ポンドで構成される通貨バスケットであるIMFの特別引き出し権(SDR)に
元やルーブルを加えてドルに替わる準備通貨とする構想を提案し、
ドル一極体制への挑戦と物議を醸した。しかし、この構想は人民元の国際通貨への道がまだ遠いことを自覚して、
当面はSDRのなかで元の力不足を補完してもらいながら、実力を蓄えていこうという深慮遠謀と見るべきだ。
ドルの凋落(ちょうらく)論も性急過ぎる。米国がドルの世界的地位を簡単に明け渡すとも思えない。
基幹産業、金融機関の救済に必死なのもドルの威信回復のためだ。
また、10年前の金融危機でIMFの救済融資を受けたアジア諸国はIMFの厳しい内政干渉に苦しみ、
その不信感が逆にドル信仰を強め、いまだにドル蓄積をはかっている。途上国にとってはドルはまだまだ救世主なのだ。
ドルの力が揺らぎ、ユーロも精彩を欠くなかでは円、元とも「鬼の居ぬ間に洗濯」の感もあるが、
脇見をせずに日本経済を早く盛り返すことが円国際化の近道だろう。(昴)
http://www.asahi.com/business/topics/column/TKY200905180388.html