【ニューデリー=武石英史郎】ネパール共産党毛沢東主義派(毛派)議長で、同国の連立政権を率いてきた
ダハル(通称プラチャンダ)首相は4日、辞任を表明した。内戦時代の旧敵だった国軍トップを解任したことに
対し、連立内部から離脱が相次ぎ、制憲議会で過半数の維持が難しくなっていた。
4日午後、国営テレビで演説したダハル氏は「民主主義と平和を守るため、今日辞任した」と述べるとともに、
連立を組んだ他の与党や野党、大統領への批判を並べた。毛派は今後政権外に去り、街頭デモなどを
激化させる構えで、3年間続いた和平プロセスは重大な局面を迎えた。
毛派主導の政府は3日の閣議で、和平協定で定められた毛派軍の国軍統合を拒むカタワル陸軍参謀長を
解任した。だがこれに反対する統一共産党など2党が連立を離脱。さらに最大野党ネパール会議派出身の
ヤダブ大統領が「解任は無効。参謀長職を続けるよう命じる」と参謀長に続投を指示。対立が深まっていた。
(中略)
しかし毛派幹部のバタライ財務相は「我が党は政権外に出て今回の不法な措置と戦う。街頭で人々の
支持が我々にあるか示す」と述べ、政権には加わらず、抗議デモを開始する意向を示した。
圧倒的な動員力を誇る毛派の抗議活動は過激さで知られる。06年まで続いた武力闘争の末期には、
首都カトマンズを2週間以上封鎖し、マヒ状態に陥れたこともある。カトマンズではすでに、参謀長解任に
反対する野党系のデモ隊を、解任を歓迎する毛派のデモ隊が数で制圧。一部では負傷者も出ている。
毛派が孤立を深めた場合、懸念されるのは国内28カ所の駐屯地にとどまる毛派軍部隊の動向だ。
06年の和平協定に従い、すべての武器は国連が監視するコンテナの中に収められているが、
国連要員は非武装で、鍵は毛派側が持っているとされる。一部の師団長は、地元ラジオの取材に対し
「国軍の動き次第では、駐屯地を出る」と述べるなど、不穏な空気が広がっている。
http://www.asahi.com/international/update/0504/TKY200905040160.html