http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20090425/CK2009042502000109.html 太平洋戦争の激戦地パラオ諸島・ペリリュー島で戦死したとされる旧中村(現・真岡市)
出身の伊沢正(しょう)さん=当時(24)=の日章旗が二十四日、六十八年ぶりに遺族に
返還された。弟の栄治さん(74)は「『兄自身が帰ってきてくれた』というくらい信じ
られない思い」と感慨深げだった。
日章旗は横約一メートル、縦約七十センチ。「武運長久 三ツ谷青年団一同」の文字の下に
約六十人の寄せ書きがあり、栄治さんの名前も記されている。
ことし一月、米テキサス州に住むクリフォード・ワイナーさん(49)が、戦時中に海兵隊員
だった父ジョシュアさん=二〇〇五年に死去=の遺品を整理していて見つけた。「何とか遺族
に返したい」と、勤務先の日本人の同僚に相談。「三ツ谷」という地名から同市に突き当たった
ため、市に調査を依頼した。
この日、同市役所でワイナーさんの代理人が栄治さんら遺族に旗を手渡し「旗は大切に保管
されており、父は(正さんに)格別な尊敬を抱いていたと思う」とのワイナーさんの手紙を代読した。
栄治さんによると、正さんは一九四一年に陸軍に入隊して満州(現・中国東北部)に出征、その後
音信不通に。四四年には「ペリリュー島で玉砕した」との報が入り、遺骨の代わりに名前の
書かれた紙片入りの木箱が送られてきたきりだった。
真岡鉄道の久下田駅で出征する正さんを見送ったという妹の松田トクさん(81)は「最後に兄と
会ったとき『三年で戻るからおふくろも元気で待っててくれ』と話していたのを覚えている。
ようやく戻ってきてくれてうれしい」と安堵(あんど)の表情を見せた。