【依頼:560】
<人は見かけによらない>と俗にいうが、あえていうのは、逆に、たいていは
<見かけによる>からだろうか
▼素人の才能を発掘する英テレビ番組に一人の女性が登場した。スーザン・ボイルさん。
英メディアによれば、四十七歳、独身、無職、教会ボランティア、小太り、やぼったい感じ。
これらが彼女の<見かけ>である。ところが、歌を歌いだすと
▼大変な美声と声量で審査員は呆然(ぼうぜん)、観客は総立ち。ネットで見たが、まさに
“スター誕生”の瞬間というべき雰囲気である。その映像には世界中から既に夥(おびただ)
しい数のアクセスがあり、米国の有名番組への出演話も。CDを出せば大ヒット確実という声もある
▼<見かけ>に隠された<本質>に光が当たった。そのドラマ性が熱狂を呼んでいる面が大きかろう。
外見だけでなく年齢、職業、学歴、家柄…。さまざまな<見かけ>が<本質>を押しのけ、幅を利か
せる現実世界の裏返しとして
▼世襲候補の出馬制限をめぐる議論が自民党や民主党で進むが、ここにも通底しよう。例えば
「親が国会議員」は<見かけ>のうちだ。実現すれば<本質>勝負の人が選挙に出やすくはなるはずである
▼両方兼ね備えた人もいるだろうし、個人の自由の制限だという反対論にも一理はある。ただ、政治の世界
の「ミス・ボイル」を埋もれさせないため、何か知恵がいるのは確かである
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2009042502000095.html