【依頼53】
たんぱく質:花粉管引き寄せるルアー 百数十年のナゾ解明
花のめしべに取り付いた花粉の精細胞を、めしべの根元の卵細胞まで正しく誘導する2種類の
たんぱく質を、東山哲也・名古屋大教授(植物学)らが発見した。魚を引き寄せる釣りの疑似餌に
なぞらえて「ルアー1」「ルアー2」と名づけ、19日発行の英科学誌ネイチャーに報告した。
植物は受粉すると、花粉から花粉管(直径0.01ミリ)が伸び、めしべの根元の「胚(はい)のう」
にある卵細胞に到達。そこで受精して種子を作る。しかし、花粉管がなぜ迷わずに卵細胞にたどり
着けるのかは百数十年来の謎だった。
東山教授らは、胚のうの一部が露出している園芸植物「トレニア」で、受精の様子を観察する
手法を開発。卵細胞の隣にある助細胞だけで働く二つの遺伝子に着目した。これらの遺伝子から
作られるたんぱく質のある場所に花粉管が伸びることを発見し、このたんぱく質を使って花粉管の
動きを自在に制御することができた。遺伝子が働かないようにすると、花粉管が迷子になることも
確かめた。
東山教授は「今後、さまざまな植物でルアーのような誘引物質が特定されれば、人工交配が
難しかった作物間での育種にも道が開けるのでは」と話す。【西川拓】
http://mainichi.jp/select/today/news/20090319k0000e040018000c.html