【依頼410】
米写真家が見た被災者の64年 『長崎』『東京』の肖像展
2009年3月14日 夕刊
米ニューヨークの写真家ポーレ・サビアーノさん(34)が長崎原爆と東京大空襲の被災者を撮影した肖像写真の展覧会が東京・浅草のギャラリー・エフで始まった。
東京大空襲の実態を知らなかったというサビアーノさんは「写真家として歴史上の出来事を理解するためには撮影しかなかった」と話す。
ヒラリー・クリントン米国務長官や歌手マイケル・ジャクソンさんらの肖像写真など世界中で作品を発表している気鋭の写真家で、注目を集めそうだ。
江戸時代の土蔵を再生したほの暗い展覧会場では、十七人の肖像写真が並ぶ。穏やかな雰囲気ながら、そこにある「人」の存在を強く印象づける。
このうち十一人は長崎の被爆者。被爆者を撮りたいとの思いはかねてあったが、三年前に初来日してさらに募り昨年九月、長崎での撮影が実現した。
その後、上京して江東区の東京大空襲・戦災資料センターを訪れ、東京大空襲の実相を初めて知る。長崎や広島の原爆と同様に、
米軍機が投下した爆弾で十万人といわれる死者を出した大空襲。衝撃的な事実に心を動かされ、滞在を延長して空襲体験者六人に会いに行った。
「体の傷あとを撮っても構わない」という被災者もいたが、「外側の傷を撮るセンセーショナルな写真ではなく、内側の感情を写し撮りたかった」とサビアーノさん。
犠牲者の名が連ねられた寺の檀家(だんか)の記録を見て、日本語は読めないが、同じ文字が何行も並んでいるのが分かった。「家族皆殺しのような状況だったんだと思った」
大切な人を奪われた心の傷を抱えて生きてきた人々。
「八月九日(長崎原爆)や三月十日(東京大空襲)のことだけでなく、そこから始まった六十四年の人生の旅を知ることがとても大事だった」と振り返る。
四月十二日までの正午−午後九時。火曜休み。入場無料。ギャラリーは台東区雷門二の一九の一八。電03(3841)0442。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009031402000212.html http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/images/PK2009031402100146_size0.jpg