海上自衛隊派遣、武器使用判断は現場にしわ寄せ=「過剰防衛」の懸念も
政府は13日、ソマリア沖の海賊対策のため、現行の自衛隊法に基づく海上警備行動で海上自衛隊派遣に踏み切った。
海賊対処法案を早期に成立させて、同法に基づく活動に切り替える方針だが、
それまで、実際に海賊に遭遇した場合、どう対処するか。
自衛官は武器使用をめぐり、瞬時に難しい判断を迫られそうだ。
海自は派遣する護衛艦の衛星通信設備を増強、音声や映像のデータを
日本の自衛艦隊司令部と24時間やりとりできるようにした。
これにより、司令部と護衛艦の密接な情報交換が可能となったものの、
防衛省幹部は「現場では連絡する暇がないほど一瞬の判断を迫られる場合がある。
その時は、現場の判断に委ねられる」と指摘する。
対処法案が成立すれば、護衛艦は海賊船とみられる船が停船に応じない場合、
船体射撃が認められる。しかし、自衛隊法に基づく海上警備行動で武器が使用できるのは、
警察官職務執行法の準用による正当防衛と緊急避難の場合に限られる。
例えば、海賊が先に護衛艦や民間船舶に攻撃してきた場合は、
正当防衛や緊急避難で反撃が許される。しかし、海賊が何もせず、
民間船舶に近づくだけでは先制的な攻撃はできない。
民間船舶によじ登って侵入しようとする海賊を射撃して負傷させた場合、
防衛省には「過剰防衛」と世論から批判されることを懸念する向きもある。
海賊が船舶によじ登ってくるようなケースでの武器使用について、
防衛省幹部は「法解釈では許されている」と指摘しながらも、
「実際の運用で武器を使用するかは明らかにできない」としている。
自衛官が海外で武器を使用すれば、自衛隊発足後初のケースとなるだけに、
海自幹部からは「現場の艦長は眠れない日が続くだろう」との声も出ている。
(了)(2009/03/13-20:36)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009031300995