【依頼692】
戦争や災害などによって破壊された街や場所を描いている画家、中西繁さん(62)=神奈川県鎌倉市=の絵画展「棄てられた街 in 大阪」
(毎日新聞社など後援)が23日から、大阪市中央区の府立現代美術センターで開かれる。阪神大震災で大きな被害を受けた神戸の長田地区
や紛争地などに足を運んだ中西さんは「平和や都市景観について議論を深める場にしたい」と話している。【牧野宏美】
絵画展は二部構成。一部は神戸の長田地区のほか、第二次世界大戦でユダヤ人が大量虐殺されたポーランドのアウシュビッツ強制収容所
▽90年代に内戦のあったボスニア・ヘルツェゴビナ▽かつて炭鉱で栄えた「軍艦島」と呼ばれる長崎県の端島−−など「負の遺産」を描いた作
品を展示。二部はフランスやハンガリー、チェコなどの美しい街並みや景観を表現した「世界のすばらしい遺産」が並ぶ。中西さんは「性格の違
う絵を同時に見てもらうことで、人類への教訓につなげたい」と言う。
「廃墟」を描くきっかけとなったのが、95年の阪神大震災。発生から約2週間後に東京から神戸に入り、焼け野原となった長田地区を歩いた。
言葉にならない衝撃を受け「この情景を絵で残さなければ」と、神戸から帰って2、3日で作品を完成させたという。その後も実際に現場に行って
描くことにこだわり、00年に訪れたボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボでは、ミサイルで破壊された建物内の窓から侵入。屋根が抜け落ち、
がれきの山となった部屋や爆弾の製造方法が書かれた壁を、縦約2・3メートル、横約5・5メートルのキャンバスに力強く描いた。
これらの作品を集め、02年に東京・銀座で「棄てられた街」展を初めて開催。横浜、名古屋、山形でも巡回展が開かれ、大阪は5都市目。
今後、福岡、松山でも開かれる予定という。
中西さんは「地上戦を経験し、今も米軍基地を抱える沖縄や、ニューヨークの国連本部での絵画展を実現させたい。巡回展を通じ、草の根の
平和運動をしたい」と意気込んでいる。
28日まで。無料。26日午後4〜6時には、中西さんのギャラリートークがある。問い合わせは同センター(06・4790・8520)。
http://mainichi.jp/area/osaka/news/20090312ddlk27040266000c.html