【依頼568】
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2009030902000091.html マラソンの神様がいるとしたら、シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんに
こう声を掛けるかもしれない。「あなたの抱いた夢は受け継がれていく」と
▼高橋さんも走った昨日の名古屋国際女子マラソン。優勝したのは、マラソン
初出場の藤永佳子選手だった。十年前のスペインでの世界選手権に高校生として
三大会、六年ぶりに五千メートルで出場した経歴の持ち主。長距離での将来性を
買われていたのである
▼この大会には高橋さんもマラソンで選ばれている。しかし左足つけ根の痛みが
引かず、当日に出場を断念するしかなかった。翌年の五輪では、悔しさを晴らす
かのような金メダルへの笑顔でのゴールだった
▼藤永選手は今回の優勝で、ドイツでの世界選手権に出場できる。思うような
成績を出せずに苦悩した時期もあったが、ようやく高橋さんの背中が見えてきた。
ゴールの瞬間の笑顔には、やはり万感の思いが込められている
▼中学生の時、高橋さんの笑顔のゴールを見て「自分も」と思った新谷(にいや)
仁美選手は、レースを引っ張ったものの最後は八位に後退した。二年前に東京
マラソンを制した時の笑顔と今回流した涙により、夢に近づいていくのだろう
▼高橋さんはといえば、沿道の声援に応えようと、笑顔を絶やすことなく完走した。
二十九位。神様は一言、付け加えるかもしれない。「ありがとう」と。