http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20090228/CK2009022802000059.html 戦時中、東京の軍施設に徴用され、一九四五年三月十日の東京大空襲で亡くなった
朝鮮人の遺族らが二十七日、追悼会に出席するため来日した。この日は江東区の
東京大空襲・戦災資料センターを訪問。惨禍を伝える映像や史料に触れ、深い
悲しみや日本政府への憤りを表した。 (小林由比)
来日したのは、いずれも父親を亡くしたソウル市の黄秉煥(ファンビョンファン)さん
(71)と金琴蘭(キムクムラン)さん(71)。大空襲で亡くなった朝鮮人の追悼会
を開いている「東京朝鮮人強制連行真相調査団」の招きで、初めて日本を訪れた。
同調査団は二〇〇五年に都慰霊堂に安置されている東京大空襲犠牲者の無縁仏の名簿
などから約五十人の朝鮮人を割り出し、〇七年からこの時期に追悼会を開いている。
黄さんの父洙達(スダル)さんは一九四四年、黄さんと母、妹の三人を残し徴集された。
金さんの父鳳石(ボンソク)さんも三十一歳で日本へ。二人とも芝浦海軍施設補給部で
働かされ、江東区内にあった深川宿舎で空襲に遭った。
同センターで、同調査団が作成した朝鮮人犠牲者の名簿の中に父の名を見つけた金さんは
名簿を何度も手に取り声を上げて泣いた。「名前を見て、この国に来て死んでいったこと
の不条理を思った。今まで忘れるようにしていたが、六十年分の涙があふれてきた」と
金さん。入学を控えた金さんに「すぐ帰ってくる。ランドセルをお土産に買ってくる」と
旅立ち、二度と会えなくなった父への思いを募らせた。
黄さんも「私たちの民族を引っ張っていった日本政府と、(焼夷(しょうい)弾を)
投下した米政府両方に対して思うことが多い」と述べ、無念さをにじませた。洙達さん
の遺骨は見つかっていないほか、遺族の思いに反し、靖国神社に合祀されているという。
二人は二十八日に都慰霊堂(墨田区横網)で開かれる追悼会に出席し、亡き父への追悼の辞を述べる。
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