小学生の時に視力を失った橋本市立隅田中学校の非常勤講師(社会科)、
大前雅司さん(23)が県教委の教員採用試験に合格した。来年4月、県で初めて全盲の中学教諭が誕生する。
2度目の挑戦で夢をかなえた大前さんは「生徒とのかかわりや周囲の先生方の支えが励みになった。
どんな時も前向きに、自分らしくいたい」と話す。【清水有香】
大前さんは緑内障による生まれながらの弱視で、9歳の時に失明した。小学3年まで通った普通学校の担任や、
県立和歌山盲学校で所属していた囲碁部顧問など、指導に熱心な先生との出会いが教師を目指すきっかけになった。
日本福祉大(愛知)で教員免許を取得。友人やボランティアの協力で、教科書を点字にし、図やイラストを読んで説明してもらった。
多い時は1日10時間勉強。あまりの大変さに、「気持ちがなえてしまった」。大学4年時に受けた採用試験は2次で不合格になった。
同中学での非常勤講師が決まったのは卒業式の翌日。「このチャンスに感謝し、
来年こそ合格」という強い気持ちで、授業の傍ら再び試験勉強に励んだ。
「教壇に立ち、教師になりたいという思いが確かになった」と振り返る。子どもたちの元気なあいさつも力になったという。
現在、非常勤講師の松原庸介さん(24)が板書するなど2人で授業する。松原さんは「大前先生は授業を良くしようと熱心で、
生徒からも慕われています」と語る。声を頼りに生徒の名前を覚えるなど苦労は尽きない。
それでも、「自分が成長でき、やりがいを感じる」と大前さん。「子どもの立場で考えられる教師になりたい」と話している。
◇あす和歌山で講演
県立和歌山盲学校(和歌山市府中)で13日午後1時半、大前さんが「教職を目指して」と題して講演する。
無料。問い合わせは同校(073・461・0322)。
http://mainichi.jp/area/wakayama/news/20081212ddlk30040366000c.html 【依頼166】