>>1 【スパゲティ氏の評価】
リーバイス・トラウス(ジーンズ)氏の功績は、未開部族の社会における「数学的法則の発見」と、
「神話におけるパターン化の定立」であり、哲学・思想界では
前者をもって「近代科学を主軸とする、西欧近代主義への一撃」とみなしている。
というのは、西欧近代主義は「西欧文明=理性的=意識主義的=合理性=その女王としての数学」
という図式と、「未開部族=非理性的=キリスト教化・文明化の対象」という図式を
対立させて、これを地理的・精神的植民地主義の大義にしていたわけだからである。
これに対してリーバイス・トラウス氏は「文明化」されていないはずの未開部族が、
「無意識」で高度な数学的法則を用いて交差いとこ婚という文化的ルールを
運営していたことを実証して、「未開部族も合理的なシステムの生を営んでいるんだよ」
と主張したわけだ。しかしこれは後から判定するとE・Oウィルソンらによる「社会生物学」に
きわめて接近した業績といえる。「社会生物学(=進化心理学)」によれば、昆虫ですら
数学的・幾何学的な法則をもちいて社会システムを運営しているわけで、
結局のところリーバイス・トラウス氏の発見した「構造」は、生物学者が「文化人類学者から貰った
単なる一データ」として、生物学主義に吸収されてしまった。
では「神話におけるパターン化の定立」はどうかというと、これは民族学者らがトラウス氏より
前に研究しており、民族学者ウラジーミル・プロップや心理学者カール・グスタフ・ユングなどを
類似研究として挙げることができる。だからこの分野におけるトラウス氏の業績とは、畢竟「二番煎じ」
の印象が否めない。しかしこんなトラウス氏が「構造主義の祖」として「フランス現代思想」という
一大潮流の源泉になったという歴史現象は、「二度の世界大戦→冷戦」という激動のカオス現代に
晒されていた大陸系哲学者の「溺れる者、藁にもすがる」という「錯乱」なのか、それともトラウス氏のもつ
独特の「文体」のもつ「教化能力」によるのかなど、「構造概念そのもの」ではなしに、
その「構造概念」の「アカデミズム的影響」はまだ考究される必要があると考える。(spagetty 2008/11/28)