http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2008112402000084.html 敬愛する人物の名前を、わが子につけることは珍しいことではない。
今は七十七歳の父親が命名したのは「毅」。尾崎行雄とともに「憲政の神様」と
称された犬養毅にあやかっている。「正しく強く生きてくれることを願った」のだという
▼人生とは何と皮肉なことか。願いもむなしく四十六歳になった子どもは「事務次官を殺した」と
血の付いたナイフなどを持って警察に出頭。銃刀法違反の疑いで逮捕された。
そう、小泉毅容疑者である
▼山口県の出身で、大学には八年間在籍して中退した。仕事は人間関係がうまくいかず
何回も変えているらしい。実家ともこの十年間、音信が不通。留守番電話に伝言を残しても
反応はなかった
▼住んでいたのは六畳二間のアパートの一室。約六万円の家賃の支払いが滞ることはなかったが
年齢からして満足できる独り暮らしではなかったはず。工事の騒音をめぐり、トラブルを
起こしたこともあったと聞く
▼まだ断言はできないが、連続殺傷事件の犯人とすると「年金テロ」というよりも
社会への漠然とした不満が引き金になったように思える。犬養毅の言葉としてよく
知られている「話せば分かる」にあやかれなかったのか…
▼今は全容が解明されることを待つことにしよう。何であれ、かけがえのない人の命を
奪うことが許されないことを、何回でも訴えながら。