【次代への名言】11月11日・シュペングラー
2008.11.11 03:11
■「数世紀のなかにはもはや西欧文化はなくなり、ドイツ人、イギリス人、フランス人はなくなるであろう」(シュペングラー『西洋の没落』)
ちょうど90年前のきょう、パリ郊外で休戦協定が結ばれ、欧州を主戦場に、世界史に一大変革をもたらした第一次世界大戦は終結した。
戦闘は4年3カ月間にわたり、合わせて850万人の兵士が戦死したが、英仏の戦死者数は約20年後に起こる第二次世界大戦をはるかにし
のぐ。また、2120万人が負傷し、民間人の犠牲者は約660万人にのぼった。
同じ年にドイツで出版されたのが『西洋の没落』(第1巻、4年後の第2巻で完結。引用は五月書房刊)だった。文化にも生死があり、ギ
リシャ・ローマの没落と同様、西洋(西欧)にも没落(死)の「ごく初めの徴候」がすでに認められる−。こんな論証を試みたこの大著は「
西欧の自滅」を予感させる大戦後の陰鬱(いんうつ)な気分とあいまって大評判となった。
その論旨は壮大ではあるが、少し独善的、ことさら難解−の観がある。また、シュペングラーは拒否し続けたが、ナチス高官が当初、彼(
の思想)に好意的だったことなどから、『没落』に寄せられているのは称賛ばかりではない。だが、戦後、西欧が東と南に拡大し、欧州連合
(EU)として「新しい欧州」を模索する姿を見ると、冒頭の彼の“予言”は実現しつつある、のかもしれない。
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/081111/acd0811110311000-n1.htm