先日、ある会合で小野田寛郎さんと歓談した先輩記者から聞いた話だ。
小野田さんが、子供たちを対象に、野外活動指導を行ってきたことはよく
知られている。そのスタッフとして手助けしてくれる若者たちと話をしていて、驚いたという。
▼彼らとて、小野田さんが、フィリピン・ルバング島で密林生活を送った
ことは知っている。だが、その理由となると、見当もつかないそうだ。なかには、
こんな質問もあった。「パスポートをなくしたんですか」。
▼若者たちの、現代史離れは、想像以上に進んでいるようだ。週末に
航空自衛隊の田母神俊雄幕僚長の更迭騒動を引き起こした、論文を
読んでみた。納得する主張もあれば、首をかしげる部分もある。事実関係では、
知らないことも多く、勉強不足を痛感した。
▼ともあれ、インターネットで、誰でも全文が読める。政府の歴史への
「見解」である「村山談話」と、どちらが「ゆがんだ考え」なのか、比べることもできる。
これがきっかけとなって、昭和史への関心が高まれば、騒動にも意義があったといえる。
▼ところで今回、中国政府の反応は、比較的冷静なものだった。
胡錦濤国家主席は、田母神氏を即座に更迭した日本政府の、過敏とも思える対応を、
どのように見ているのだろう。3年前、中国人民解放軍の朱成虎少将が、欧米紙記者に、
米国が台湾海峡の戦争に介入すれば「核兵器で反撃する」と明言し、
国際社会を唖然(あぜん)とさせた。
▼中国は公式には、核の先制使用を否定している。少将の発言は、
それに背くものだったが、何の処分も下せなかった。軍に対して、
シビリアンならぬ党のコントロールが利いていないことをさらけ出した、
苦い記憶が蘇(よみがえ)ってきたのではあるまいか。
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/081104/trd0811040300001-n1.htm