山あいの坂道を、花嫁を囲む一団がゆっくりと進む。
よく見ると、花嫁は男。花婿も両親もおしろいを塗って婚礼衣装に身を包み、
「結婚」の知らせに集落を練り歩く。香美町村岡区長板に伝わる、男性だけ
の花嫁行列「囃子(はやし)込み」だ。
豊作を祝い子孫繁栄を願って、江戸中期から始まった祭り。一九四七年に
いったん途絶えたが、九一年に復活した。みこしや太鼓を含めて約四十人の
行列は、行く先々で獅子舞の演舞を披露し、地域住民にあいさつして回った。
沿道から「あんた若い嫁さんもらったねえ」と冷やかす声が飛ぶ。
「そうだろう。少し、いかついけどね」と返す花婿。少子高齢化が進み、
本当の嫁入り風景を見ることは少なくなった小さな農村だが、白塗りの
珍集団が立ち寄るたびに、元気な笑い声が響いた。
http://www.kobe-np.co.jp/news/tajima/0001517605.shtml