日本語研究を通じて「日本とは何か」を追究し続けた国語学者の大野晋(おおの・すすむ)さんが
14日午前4時、心不全のため死去した。88歳だった。通夜は17日午後6時、
葬儀は18日午前10時から東京都台東区谷中7の14の8の天王寺で。喪主は妻千恵子(ちえこ)さん。
東京・深川生まれ。43年に東京帝大(現東京大)国文科を卒業後、橋本進吉の上代特殊仮名遣いの研究を
継承して音韻や文法の研究に取り組んだ。53年に「上代仮名遣の研究」を発表、「日本書紀」の万葉仮名に
清濁の区別があったことを指摘するなど、上代語の解釈に新分野を開拓した。57年の「日本語の起源」などでは、
国語の語彙(ごい)の歴史的な変遷について究明し、顕著な成果を残した。
60年から90年まで学習院大学教授を務めながら、国語を通じての幅広い視野に立った日本文化論を展開。
日本語がどこから来たかを問い続け、79年から南インドのタミル語と日本語との関連を論じた新説を発表、
反響を呼んだ。独自の文明論に発展したこの学説には批判も多かったが、研究の集大成として00年に
「日本語の形成」、04年には「弥生文明と南インド」にまとめた。
63年に帰宅途中の女子高校生が殺された「狭山事件」に際しては、脅迫状を言語学の立場から分析、
被告の無罪を訴えた。また、66年から3期、国語審議会(現・文化審議会国語分科会)委員を務めるなど、
日本語教育のあり方についての「ご意見番」としても知られた。
最近は約3千の古語の語源や変遷をたどる「古典基礎語辞典」の編集に教え子らと取り組み、
「この辞典ができるまでは死ねない」と最後まで語っていたという。同辞典は来年、刊行予定。
著書に100万部を超すベストセラーとなった「日本語練習帳」や、「日本語の年輪」「日本語の文法を考える」
「岩波古語辞典」(共同編集)などがある。
http://www.asahi.com/obituaries/update/0714/TKY200807140103.html