子どもを亡くした母ザルが、群れからはぐれた別の子ザルの里親に――。
そんな義理の母と子が、大分市の高崎山自然動物園で人気を集めている。
推定20歳のテンテンとオスで1歳のタクマ。ニホンザルが血のつながっていない子の
母親代わりになるのは「非常にまれなケース」と専門家は話している。
園内の餌場で、タクマがテンテンの胸に顔をうずめ、お乳を吸っていた。
「甘えん坊なんですよ」と、案内係の種村将さんが目を細める。2匹の姿は親子そのものだ。
タクマは昨年12月、生後4カ月で群れからはぐれた。1匹だけ園内に取り残されているのを
職員が見つけた。翌日に若いメスザルがタクマを連れていったが、森の中に放置。
タクマは飢えと寒さで衰弱して倒れていた。
「このままでは死んでしまう」。職員はタクマを保護し、世話をしてくれるメスザルを探し始めた。
でも、どのサルもタクマにまったく反応を示さない。邪険に追い払うサルもいた。
独りぼっちのタクマは園内を所在なげにうろつくようになった。
子どもを亡くして日の浅い母ザルに狙いを絞った。目の前でタクマをつつき、鳴き声をあげさせ、
母性本能をくすぐる作戦に出た。すると、1カ月前に子どもを亡くしたテンテンが職員を威嚇し、
駆け寄るタクマをお尻に乗せて山へ帰っていった。
それから半年。2匹の仲むつまじい様子は変わらない。テンテンの愛情を受けて
タクマの体力はすっかり回復。「たくましく育ってほしい」という思いでつけられた名前の通りに成長した。
http://www.asahi.com/national/update/0622/SEB200806210022.html