多くの日本国民にとっては、予想をはるかに超える展開だったろう。台湾の立法院で日本非難が噴出し、
軍艦を出動させよとの声まで上がった。台湾の駐日大使にあたる代表が召還され、辞意を表明する騒ぎになった。
きっかけは沖縄県の尖閣諸島近海で、領海に入ってきた台湾船と海上保安庁の巡視船が衝突し、台湾船が沈没した事故だった。
尖閣諸島については、1970年代に台湾と中国が領有権を主張し、民間活動家の抗議船が侵入するなどの事件が
ときどき起きていた。海上保安庁が領海侵犯に目を光らせている海域だ。
だが、今回はそうした抗議船とは違って、釣り客を乗せた遊漁船だった。これを巡視船が追跡し、事故になってしまった。
釣り客ら16人は救助され、台湾に戻った。
台湾側の怒りを呼び起こしたのは、事故直後の日本側の説明に問題があったようだ。那覇の海上保安本部は当初、
遊漁船側に衝突の全責任があるかのような発表をしたが、これに対し、台湾では「巡視船がぶつかってきた」と報じられ、非難が広がった。
結局、事故から4日後、石垣海上保安部は「巡視船が十分な距離を確保せずに接近した」などと、巡視船側にも落ち度があったことを認めた。
それにしても、台湾側の過熱ぶりには驚くばかりだ。事件に抗議する活動家らが尖閣諸島の海域に船を出し、
事故を防ぐためとして同行した台湾の巡視船ともども、日本領海に入った。
立法院での議論はさらにエスカレートし、軍艦を出せとか、戦争も辞さないとかの発言まで飛び出したという。
これは度を超している。冷静さを取り戻してもらわねばならない。 (以下略)
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