肝臓の細胞が線維化し治療が困難とされる肝硬変を、線維化を起こすタンパク質コラーゲンの
生成を抑える薬を投与することで健康な状態に戻す実験に、札幌医大の新津洋司郎教授
(臨床腫瘍(しゅよう)学)らのグループがラットで成功した。31日付の米科学誌ネイチャー
バイオテクノロジー(電子版)に発表した。
早ければ年内にも米国で治験(臨床試験)を始める予定。新津教授は「人に副作用が出ないか
どうかの確認などが課題だが、5年以内に実用化したい」と話している。
肝硬変は肝炎の慢性化などによりコラーゲンが過剰に分泌されて起きる。肝がんにも進行、
日本では年に4万数千人が肝硬変と肝がんで死亡している。
新津教授らは、遺伝情報を写し取るRNAの働きでタンパク質合成を抑制する「RNA干渉」と
いう現象に着目し、コラーゲン生成を促す遺伝子の働きを抑えるRNA断片を設計した。
これをリポソームという人工膜で包み、肝臓の中でコラーゲンを作る細胞が取り込みやすいよう
ビタミンAを結合、肝臓内のコラーゲン生成だけを抑制する薬を開発した。
肝硬変のラットを使った実験では、薬を投与しなかった60匹が約40日で全滅したのに対し、
薬を毎週注射した12匹は生き続け、約5週間で肝臓が正常な状態に回復、副作用もなかった。
肝臓内ではコラーゲンを溶かす物質も分泌されているため、蓄積したコラーゲンは徐々に
取り除かれ、正常な肝細胞が回復したという。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/science/20080331/20080331_001.shtml