三菱重工業は2008年度に、国産ロケット「H2A」を使った商業衛星の打ち上げを始めることを明らかにした。
米国と韓国の通信関連企業と最終交渉に入っており、3月にも打ち上げ業務を受注する見通し。H2Aは23日に
14号機の打ち上げに成功したが、従来はすべて観測目的など政府系衛星用。昨春に国からH2A事業を引き継いだ
同社はコスト削減などをテコに、海外のロケット大手が独占してきた民間利用目的の衛星用の市場に参入する。
三菱重工の佃和夫社長が日本経済新聞記者に対し、14号機の成功を受け「H2Aロケットの技術の信頼性が強まり、
世界市場で競争できる製品力が高まった」と述べた。同時に、来月中に商業衛星用を受注し、09年2月までに打ち上げる
見通しを明らかにした。交渉相手の企業名は明らかにしていないが、H2Aを使って通信衛星を打ち上げ、映像など各種データ通信に利用するもよう。
国主導で開発したH2Aは01年の1号機以来、日本政府を中心に国が発注する衛星の打ち上げに利用してきた。
開発段階の1996年に三菱重工やIHIなどの共同出資会社がいったん米社から通信衛星用に受注したが、その後に
改良前のH2ロケットが二度打ち上げに失敗したためキャンセルされた経緯がある。
H2Aの打ち上げは現在、三菱重工に移管されているが、08年度中に決まっているのは、温暖化対策の二酸化炭素濃度を
調査する日本の政府系衛星用だけ。今回が実質的に、商業衛星用の初受注となる。
世界の商業衛星の打ち上げ需要は年20基前後ある。半分程度を受注している欧州アリアンスペースなど海外企業が独占している。
三菱重工の打ち上げ価格は1基当たり100億円程度。制御プログラム開発などを見直し09年に70億―80億円程度まで下げ、
コスト面でも海外勢に対抗できる体制を整える。商業衛星用H2Aの見込み生産に着手しており、08年度中の打ち上げは
可能という。今後は商業衛星と政府系衛星を合わせて、年3―5回の打ち上げ受注を狙う。
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日経新聞朝刊より