「閻魔さまからの授かり物」地元有馬で公開中
神戸・有馬温泉の温泉寺に約五百年前から伝わり、昨年、なぜかオークションに出品されていた銅製の経箱が、
同温泉の「太閤(たいこう)の湯殿館」で公開されている。「閻魔(えんま)さまから授かった」という面白い由来を持つ経箱で、
資料的価値も高く、専門家からは「重要文化財級」との見方も出ている。
経箱は縦二十八センチ、横十九センチ、高さ十四センチの外箱と、一回り小さい内箱の二点。その由来は、
室町時代の公家、三条西実隆の日記「実隆公記」などの文献に記述があり、
それによると、一五二八(享禄(きょうろく)元)年、同寺の大火の折、経典を納めた状態で地中から見つかったという。
このときの様子を描いた絵巻が、姫路市の兵庫県立歴史博物館に所蔵されている。
有馬には、平安時代の僧尊恵(そんえ)が、閻魔王から授かった法華経を同寺に埋めた、との伝承があるという。
発見後、「閻魔王の経典」として話題となり、大火からの再建にも一役買ったが、実際にはこの伝承をもとに以前に埋められたものだったらしい。
経箱は江戸期に火災に遭遇、経典は蒸し焼きになり「焼け経」と呼ばれたという。
経箱が公に確認されたのは一九八三年、神戸市立博物館での特別展に出品されたのが最後。
ところが昨年秋、京都のオークションのカタログに掲載されているのを、この特別展を担当していた問屋真一学芸員(現学芸係長)が偶然、見つけた。
カタログに由来の説明はなかったが、有馬温泉観光協会に連絡し、実物であることを確認の上、同協会が落札した。
特別展後の経緯は、住職の交代などもあって不明。また八三年当時に存在した「焼け経」は行方不明のままという。
同博物館の調査によると、外箱の製作年代は未詳だが、内箱は南北朝-室町前期の作とみられる。
現存する中世以前の金属製経箱は、ほかにわずか九点で、うち厳島神社平家納経(平安時代)など八点は国宝か国の重要文化財に指定されている。
有馬と同時期のものは例がなく、美術工芸史的に“空白期”を埋めるものになるという。
問屋係長は「重文級の価値があると思われる」といい、二〇〇八年度、第一ステップとして神戸市の指定文化財を目指す。
http://www.kobe-np.co.jp/news/bunka/0000841623.shtml